2024年8月27日火曜日

次の投稿 › ‹  前の投稿

父島さんぽ (3) 「『楽園』を守るための取り組み」

 

「小笠原世界遺産センター」の話題を続けます。日本の「世界自然遺産」は「白神山地」と「屋久島」が最初に登録され、その後 2005 年に「知床」が、そして 2011 年に「小笠原諸島」が登録されています。
【ご注意ください】この記事の内容は、特記のない限りは 2024 年 4 月時点のものです。各種サービスの実施状況や利用時間などが現在と異なる可能性があります。

「展示スペース」の奥にはテレビと演台の置かれたスペースがあります。「会議室」となっていますが、ちょっとしたセミナールームっぽい構造ですね。
会議室の壁には「小笠原国立公園」と「日本の国立公園」のポスターが並んでいました。小笠原の写真は「中山峠」から見た「コペペ海岸」でしょうか。

『楽園』が失われるまで

小笠原は大陸と陸続きになったことの無い「絶海の孤島」で、偶然やってきた生きものは島の環境に最適化していき、やがて小笠原の固有種に進化したということのようです。
そんな小笠原で人が暮らし始めてそろそろ 200 年になるのですが、意図的に持ち込んだ、あるいは意図せずに持ち込まれた生物によって在来種の生存が大きく脅かされることになります。
このタイムチャートはとても分かりやすいのですが、食料として導入された「ヤギ」や「ブタ」、おそらくペットとして持ち込まれた「猫」が野生化したり、植物でも「モクマオウ」や「アカギ」などが勢力を拡大し既存の植生を脅かしたりと、「固有種の楽園」が一変することになります。

猫が野生化した「ノネコ」やヤギが野生化した「ノヤギ」の駆除は現在も継続して行われていること。「ノネコ」と「飼いネコ」を正しく見分けるために、小笠原では飼いネコへのマイクロチップの装着も義務付けられているそうです。
こちらは昨日の記事で紹介した「小笠原の "Photogenic Places"」の続きですが、小笠原でもトップクラスの映えスポットとして知られる「南島」の写真です。先程のタイムチャートには「ノヤギ根絶(南)(1971) 」とあったのですが、南島にもノヤギが生息していた……ということ、でしょうか?

グリーンアノール

小笠原の固有種の天敵として悪名高いのが「グリーンアノール」です。先程のタイムチャートによると、父島に「グリーンアノール」が侵入したのが 1960 年代で、1980 年代には母島にも侵入したとのこと。「グリーンアノール」は「オガサワラシジミ」などの昆虫類を激減させたと目されています。
タイムチャートには「1960 年代に父、1980 年代には母」とあるのですが、これはグリーンアノールの父のことではなく「父島」と「母島」のことだ……と気づくのに少し時間がかかりました(汗)。
問題の「グリーンアノール」はアメリカ合衆国の南東部などに生息する緑色のトカゲです。一説によるとペットとして持ち込まれたそうですが、なんとも罪深いことをしてしまったものですね……。

グリーンアノール防衛線

展示ホールの一角には、何やら良くわからないものが置かれていますが……
これは「父島」の北隣にある「兄島」に置かれた「グリーンアノール柵」とのこと。4kV の電気が流れていて、柵を登ろうとするグリーンアノールを感電死させよう……というもののようです。
兄島における「グリーンアノール防衛線」は島を二分する大規模なものですが、これを見る限り「A ライン」での防衛は成功しなかった……ということのようですね。「B ライン」も既に突破されたようで、「兄島」の固有種を守る戦いの趨勢は「C ライン」に委ねられたように見えます。

マイマイ vs プラナリア

「マイマイリアルフィギュア」「新しい命が吹き込まれました」とのパネルの前に、小笠原の森を模したと思しきケースが置かれていますが……
中にはマイマイのフィギュアが置かれていました。「固有種の楽園」に最適化したマイマイは、外から天敵が持ち込まれたことで急速に生息数を減らしているので、最悪の事態に備えた記録を……ということでしょうか。
父島のマイマイは「ニューギニアヤリガタリクウズムシ」というプラナリアによる食害で壊滅的に数が減ってしまったそうです。プラナリアは感電すると「溶ける」そうで、プラナリアを感電させるための電気柵も設置されているとのこと。
また「ツヤオオズアリ」によるマイマイの食害に対して毒餌を撒いたり、ネズミ対策として殺鼠剤入りの箱を設置するなどしてマイマイの生育環境を取り戻すための取り組みが進められているとのこと。

カタマイマイ飼育中

ただ「天敵のいない森」を取り戻すのは容易ではないので、絶滅が危惧される種については飼育繁殖も進められているようです。

「展示ホール」のすぐ横にはガラス張りの「保護増殖室」があり……
「カタマイマイ」の飼育繁殖が行われていました。

前の記事続きを読む

www.bojan.net
Copyright © 1995- Bojan International

0 件のコメント:

新着記事