2024年8月3日土曜日

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北海道のアイヌ語地名 (1156) 「サルサルベツ川・ルベシベツ川・スワンナイ沢川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

サルサルベツ川

sar-sara-un-pe?
葭原・しっぽ・そこに入る・もの(川)
(? = 記録はあるが疑問点あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
十勝郡浦幌町と釧路音別町の境界を流れる直別川の、河口の近くで西から合流する川です。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にはそれらしい川が見当たりませんが、『北海道実測切図』(1895 頃) には「サルサランペ」という川が描かれていました。

直別川の東側を流れる「キナシベツ川」の下流部には湿地が広がっていますが、かつてこの湿地は直別川やサルサルベツ川の下流部にも広がっていました。「サルサルベツ」のどちらかの「サル」は、sar で「葭原」だった可能性がありそうです。

sar は「葭原」ですが、それとは別に sara で「しっぽ」を意味するとのこと。sar-sara-un-pe で「葭原・しっぽ・そこに入る・もの(川)」と解釈できないでしょうか。

一般的には sar-pa で「葭原・かみ」となることが多いと思いますが、直別川の南西に聳える乙部山(通称?)を「頭」に見立てて、サルサルベツ川の上流部を「しっぽ」に擬したのかな……などと考えてみました。

ルベシベツ川

ru-pes-pe
路・それに沿って下る・もの(川)
(記録あり、類型多数)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
直別川の西支流である「二号沢川」「四号沢川」の北を流れる川です。この川を遡って分水嶺を越えると常室とこむろ川の流域に出ることができます。

東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には、「チヨクヘツ」の西支流として「アクチシヤルシベ」という川が描かれていますが、この川が「ルベシベツ川」のことであるかどうかは、正直なんとも言えません。{ok-chis}-ru-us-pet で「{ぼんのくぼ}・路・ついている・川」あたりの可能性がありそうですが、ルベシベツ川を遡った先の分水嶺が ok-chis っぽい地形かと言われると、ちょっと微妙な感じがするので……。

面白いことに、『北海道実測切図』(1895 頃) では「ルペㇱュペ」と描かれていました。これであれば ru-pes-pe で「路・それに沿って下る・もの(川)」と見て間違い無さそうですね。

スワンナイ沢川

ununkoy-noske?
川の両側の断崖・中央
(? = 記録はあるが疑問点あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
直別川の西支流で、「ルベシベツ川」の北隣を流れています。『北海道実測切図』(1895 頃) には「ウヌンコイノシキ」と描かれているように見えます。これ、もしかして「イ」が「イ」に化けた……とかでしょうか。

「ウヌンコイ」は時折地名に出てくる語で、『地名アイヌ語小辞典』(1956) には次のように記されていました。

ununkoy, -e ウぬンコィ ①川の両岸が狭い断崖になっていて,川伝いに登って行った人がそこから先へは通りぬけることができず引きかえさねばならぬような地形。②両方から山が出て来てその間に挾まれた狭い土地。
知里真志保『地名アイヌ語小辞典』北海道出版企画センター p.136-137 より引用)
「スワンナイ沢川」が合流するあたりの直別川はまさにこの通りの地形を流れています。ununkoy-noske は「川の両側の断崖・中央」と言ったところでしょうか。

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