2024年6月15日土曜日

北海道のアイヌ語地名 (1146) 「アカタノンペ川・オコタヌンペ川・トウンペ川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

アカタノンペ川

wakka-ta-i-pet??
水・汲む・所・川
(?? = 記録はあるが疑問点あり、類型未確認)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
音別川の西支流で、音別の市街地の西側で音別川に注いでいます。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「ワタヽイベ」と描かれていて、『北海道実測切図』(1895 頃) には「アタタイペ」と描かれています。

「アタタイペ」が「アカタノンペ」に化けるのは少々謎ですが、北隣に「オコタノンペ」(=オコタヌンペ川)があり、それに引きずられた可能性がありそうです。

「ワタタ」あるいは「アタタ」は wakka-ta で「水・汲む」と解釈できるかもしれませんが、それに続く「イペ」が今ひとつ釈然としません。wakka-ta-i-pet で「水・汲む・所・川」と考えられなくは無いかもしれませんが……。

あるいは at-tay-pet で「もう一方の・林・川」と考えることもできるかもしれません(atar の音韻変化)。at を「オヒョウニレ」をも意味しますが、at-tay で「オヒョウニレ・林」という用例を見た記憶が無いので、「オヒョウニレの林の川」という解釈は成り立たないかもしれません。

「アカタノンペ川」とその支流である「ポンアカタノンペ川」の間に「神古丹かみこたん」という四等三角点があるので、ar-kotan-un-pe で「もう一方の・集落・ある・もの(川)」とも考えられるのかもしれませんが、「ワタタイベ」や「アタタイペ」との違いがちょっと無視できないかなぁ、と……。

オコタヌンペ川

o-kotan-un-pe
河口・集落・ある・もの(川)
(記録あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
音別川の西支流で、「アカタノンペ川」の北を流れています。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には何故かそれらしい川が描かれていませんが、『北海道実測切図』(1895 頃) には「オコタノンペ」と描かれていました。

素直に解釈すると o-kotan-un-pe で「河口・集落・ある・もの(川)」となりそうでしょうか。支笏湖の北西にある「オコタンペ湖」と似た地名と言えるかもしれません。

トウンペ川

to-un-pe?
沼・そこに入る・もの(川)
(? = 記録はあるが疑問点あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
音別川の西支流で、「オコタヌンペ川」の北を流れています。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) にはそれらしい川が見当たらない上に、『北海道実測切図』(1895 頃) には「クッチャロ」と描かれていました。

『北海道実測切図』の「クッチャロ」を遡ると、川は途中で二手に分かれていて、右手(北西側)が「コシラケウシ」で左手(南西側)が「トークッチャロ」と描かれています。「トークッチャロ」を遡ると三つの沼が描かれていて、これらの沼は地理院地図でも存在が確認できます(陸軍図では何故か一つの大きな沼として描かれていました)。

永田地名解 (1891) には次のように記されていました(但しこの記載が「トウンペ川」に相当するかは疑問あり)。

Tō un pe   トー ウン ペ   沼ノ川
永田方正北海道蝦夷語地名解』国書刊行会 p.320 より引用)
to-kutchar であれば「沼・喉元」で、「トウンペ」は to-un-pe で「沼・そこに入る・もの(川)」と読めそうです。

なお、現在の「トウンペ川」は沼の流出河川ですが、「沼に入る川」という解釈は下流側から見たものであることに注意が必要です。

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