(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。
ホロヤムワッカ川
(記録あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
国道 392 号の「永田地名解 (1891) には次のように記されていました。
Poro yam wakka ポロ ヤㇺ ワㇰカ 大ナル冷水poro-yam-wakka で「大きな・冷たい・水」と読めますが、nay あたりが略されているような感じがします(あるいは pet か)。きっと「大きな『冷たい水』の川」で、冷たい飲水を供給してくれる川だったのでしょうね。
幌内(ほろない)
(? = 記録はあるが疑問点あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
「ホロヤムワッカ川」の水源に相当する山は頂上が三つに分かれていて、中央の山の頂上付近に「幌内」という名前の三等三角点(標高 529.2 m)があります。三角点の西からは「ホロカショロ川」の支流である「四号川」が流れていて、南からは「縫別川」の支流である「七号川」が流れています。そして西からは(前述の通り)「ホロヤムワッカ川」が流れています。
幻の「ポロナイ」
これらの川のうちどれかが「ホロナイ」だったと考えたいのですが、『北海道実測切図』(1895 頃) には「ポロヤㇺワㇰカ」の東隣に「ポロナイ」という川が描かれていました。『北海道実測切図』の「ポロヤㇺワㇰカ」は「ポロナイ」と「オプッチャク」(=オクチャック川)の間を流れていて、川の長さは「ポロナイ」や「オプッチャク」よりも短く描かれています。
なるほど「ポロヤㇺワㇰカ」の位置と名前を取り違えたか……と思ったのですが、地理院地図と北海道実測切図を照らし合わせて見ると、実測切図の「ポロナイ」は現在の「幌内」三角点のあたりから南に向かって流れていて、現在の「保静橋」の北東あたりで茶路川に合流していることになっています。実際の地形を考えると、「ポロナイ」はあり得ない位置を流れていたことになりますね。
「ポロヤㇺワㇰカ」と「ポロナイ」は同一の川だった?
『北海道実測切図』は「ポロヤㇺワㇰカ」を不当に短く描き、誤って「ポロヤㇺワㇰカ」の上流部分を「ポロナイ」に繋げてしまったと考えられるのですが、あるいは「ポロヤㇺワㇰカ」と「ポロナイ」は同一の河川を指していた可能性もあるかもしれません。- 前提 1「ポロヤㇺワㇰカ」と「ポロナイ」という川が存在する(!)
- 前提 2「ポロナイ」の水源は山頂付近まで遡る
という情報があり、実測切図の作図者はこの情報に沿う形で図を描いたものの、「前提 1」が誤りだったので、トンチンカンな地図ができてしまったのかも……?
ということで本題ですが(ぉぃ)、「幌内」は poro-nay で「大きな・川」だと考えられます。もしかすると poro-yam-wakka-nay という川名を poro-yam-wakka と略す流儀と poro-nay と略す流儀があったのかも……?
オクチャック川
(記録あり、類型あり)
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
「ホロヤムワッカ川」の西隣を流れる川で、茶路川に北から注いでいます(東支流)。『東西蝦夷山川地理取調図』(1859) には「ヲフチヤクナイ」という名前の川が、また『北海道実測切図』(1895 頃) には「オプッチヤク」という名前の川が描かれていました。永田地名解 (1891) には次のように記されていました。
O-put chak オプッ チャク 尻無川 川口無キ川ナリ『地名アイヌ語小辞典』(1956) にも o-put-chak で立項されていました。
o-put-chak オぷッチャㇰ《完》川口の無い。~-nay 〔オぷッチャㇰナィ〕口無川(尻無川)。[<o-put-sak(陰部が・口を・欠く)]
(知里真志保『地名アイヌ語小辞典』北海道出版企画センター p.79 より引用)
……あ。今まで気にしたことが無かったのですが、o- は「川尻」あるいは「河口」で、put が「(川の)口」なので、o-put-chak を平易に逐語訳すると「河口・(川の)口・持たない」となってしまいますね。「河口に河口が無い」というのは「ふくろうは、ふくろうでは無い」に匹敵する謎ですが、o- は「川」を「人体」に喩えた場合の「陰部」という概念であり、put は具体的な「入口」を意味していた……ということなのでしょうね。
要は河口部が干上がっている川のことなのですが、このことを「川尻に入口を持たない川」と表現したようです。「オプッチャク」は o-put-chak で「川尻・入口・持たない」となりますが、これが「オクチャック川」に化けてしまった、ということなんでしょうね。
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