2023年12月8日金曜日

春の道東・船と鉄路とバスの旅 2017 (157) 「十勝のおいたちと先住の人びと」

帯広百年記念館」と言うからには、十勝は「晩成社」の(無謀とも言える)開拓によって拓かれた……と考えたくなりますが、もちろん広大な十勝平野は「晩成社以前」にも存在していました。
「この展示室は、人間が住み始める前の十勝からほんの百数十年前に、和人がこの地へ入ってくる前から生活しているアイヌの人々の時代までを紹介します」とあります。さてどんな内容なのでしょうか……?

【ご注意ください】この記事の内容は、特記のない限りは 2017 年 5 月時点のものです。各種サービスの実施状況や利用時間などが現在と異なる可能性があります。

おそらく期待される観覧順路を間違えたのだと思いますが、いきなり「十勝のアイヌ民族」が出てきました。「コタンの分布と人口の推移」という地図には 1855(安政 2)年と 1871(明治 4)年のコタンの位置がプロットされていますが、利別川上流域のコタンが増加して、歴舟川戸蔦別川沿いのコタンが図から消えています。
「十勝のアイヌ民族」のパネルの左隣には、毎度おなじみのこの方も。この写真は良く目にしますが、これは蝦夷地探検の頃ではなく、もっと後に撮影されたものですよね。もう少し若い頃の写真もあれば良いのですが、無い物ねだりなんでしょうね……。
「イタオマチㇷ゚(板綴り舟)」も展示されていました。これは丸木舟の側面に板を付け加えたもののようで、いわば「丸木舟のカスタム」と言ったところでしょうか。なかなか大きなものだなぁ……と思ったのですが、実はこれでもミニチュアなのだとか。
「食用にしたいろいろな植物」と題された写真パネルもありました。
こちらは「チャシコツ」(砦の跡)の分布です。コタンの分布と重なる部分も多いですが、利別川流域に有意に多そうにも思えます。十勝アイヌのテリトリーは本別のあたりまでで、足寄のあたりは釧路アイヌのテリトリーだったとも言われているので、揉め事も多かったのかも……?

十勝の先史時代

「十勝の先史時代」と題されたゾーンにやってきました。
まずは「旧石器の時代」から。パネルの手前に置かれているのは「石斧」や「石鏃」でしょうか……?
打製石器の素材としてもっとも重宝されたのが「黒曜石」です。左に置かれた黒曜石の大きさにはビビりますね……。
黒曜石から石器を作る方法が解説されていました。左の説明にもあるように、黒曜石は「火山活動でできる天然ガラス」なので、うまく割ることで切れ味のめちゃくちゃ鋭い刃ができてしまうんですよね。

「暁遺跡」の石器工場

こちらが遺跡で出土した黒曜石の刃だそうですが……これはどう形容すべきでしょう。常軌を逸した数……でしょうか。並べるだけで一苦労……では済まないような……(汗)。
これらの石器群が出土したのは「西 8 条南 12 丁目付近にある『暁遺跡』」とのこと。Google マップにもスポットがありますが、長崎屋の建物から 300 m ほど西に位置しています。「昭和 34 年に地元の中学生によって発見され」とありますが、確か「フゴッペ洞窟」も中学生が発見していたんですよね。北海道の中学生、かなり凄かったりする……?
「暁遺跡」の「スポット 12」と呼ばれる地点からは約 5,700 点もの異物が出土したそうで、石器の原材料である黒曜石の塊なども出土したことから、ここは「石器工場」だったと考えられるようです。
面白い……というか、奇妙かもしれないのが、「暁遺跡」で見つかった黒曜石は「白滝産」や「置戸産」のものが多いとのこと。道内においては白滝・置戸・赤井川・十勝三股が黒曜石の四大産地として知られていて、黒曜石は「十勝石」とも呼ばれていますが、帯広で見つかった遺跡から出土した黒曜石が、もっとも近そうな十勝三股ではなく、びみょうに離れた置戸や白滝産が多いというのは……ちょっと不思議ですよね。

縄文・続縄文・擦文

「縄文人の生活」と題されたパネルもありました。竪穴式住居の遺跡はホロカヤントーの湖畔にもありましたね。
続いて「続縄文の時代」と「擦文の時代」です。北海道は本州と時代区分がやや異なるので気をつけたいところです。
ガチ目の展示ばかり紹介しているような気もしますが、「さわってみよう!」系の展示もちゃんと用意されています。このパズルは続縄文時代(約 1,500 年前)の土器をモデルにしたものとのこと。

蝶々王国?

「十勝のチョウ」と題された展示もありました。ふーん……とスルーしてしまいそうな展示ですが、「日本で生まれ育つ 240 種類のチョウ」のうち「北海道では 124 種」「十勝地方では 104 種」が見られています……というのは、実はなかなか凄いことなのでは……?
いやまぁ、冷静になって考えるとあり得る数字ではあるのですが……。

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