(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
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ペンケチャロマップ川
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
石狩川の「大雪ダム」は「大雪湖」というダム湖を形成していて、ダムの手前で東に向かう国道 39 号と南に向かう国道 273 号が分岐しています。「ペンケチャロマップ川」は大雪湖の東側に注ぐ川で、国道 39 号の南側を流れています。「北海道地名誌」には次のように記されていました。
ペンケチャロマップ川 石狩川源流の主要支流で,石北峠・武華山からの流水をあつめ大雪ダムサイト近くの上流域で石狩川に注ぐ。川上の川口にある川の意。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.326 より引用)
ふーむ。ストレートに解釈すると確かにそうなっちゃいますか。penke-char-oma-p で「川上側の・口・そこにある・もの(川)」ということのようですが……。山田秀三さんの「北海道の地名」には次のように記されていました。
ペンケチャロマップ川
ルペシナイ川
石北峠 せきほくとうげ
ニセイチャロマップ川のすぐ上にある石狩川東支流をペンケチャロマップ川という。並流している川なので,たぶん penke-(nisei-)charomap 「上の・(ニセイ・)チャロマップ川」の意で,そのニセイが略されたものであろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.104 より引用)
なんかそんな感じがしますよね。penke-(nisey-)char-oma-p で「川上側の・(崖・)入口・そこにある・もの(川)」と考えると良さそうです。ニュウチャロマップ川
(?? = 典拠未確認、類型あり)
「ニュウチャロマップ川」はペンケチャロマップ川の北支流です。残念ながら手元の資料には情報が見当たらないようです。「ニュウチャロマップ」は ni-us-char-oma-p と考えるのが妥当でしょうか。これなら「木・茂る・入口・そこにある・もの(川)」と解釈できそうです。これもペンケチャロマップ川と同様に nisey- が略されたと考えるならば、ni-us-(nisey-)char-oma-p で「木・茂る・(崖・)入口・そこにある・もの(川)」となりそうですね。
あと、これはほぼ蛇足なのですが、{ni-ur} で「コケ」を意味するそうなので、{ni-ur}-(nisey-)char-oma-p で「{コケ}・(崖・)入口・そこにある・もの(川)」と解釈できる可能性もあるかも……です。実は……(次項に続く)
カルシュナイ林道
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)(?? = 典拠未確認、類型あり)
(前項から続く)ニュウチャロマップ川沿いに林道が通っているのですが、何故か林道の名前は「カルシュナイ林道」らしいのですね。「北海道地名誌」に次のような記述がありました。カルシュナイ沢 大雪国道にそって流れるペンケチャロマップ川の枝流。アイヌ語できのこ川の意。ユニイシカリ川の支流にも同名の沢あり。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.326 より引用)
karus-nay で「きのこ・川」ではないか……ということですね。「カルシュナイ林道」が「ニュウチャロマップ川」沿いを通っていることを考慮すると、「ニュウチャロマップ川」=「カルシュナイ沢」となる可能性が高そうに思えます。きのこが多いのであれば樹木が密生しているのが自然ですし、コケの生育にも良い環境である可能性がありそうです。
果たして本当に「きのこ」なのか
ただ……本当に「きのこ」なのかな? という疑問が残ります。たとえば tat-kar-us-nay であれば「樺の樹皮・とる・いつもする・川」なので、tat- が略されたと考えることも不可能ではありません。あと、「ニュウチャロマップ川」(=カルシュナイ沢)の河口から 0.5 km ほど遡ったところで流路がクルっと回っているところがあるのが気になります。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
この地形を指して kari-us-nay で「回す・いつもする・川」と呼んだのではないか……と考えたくなるんですよね。「伊茶仁カリカリウス遺跡」と似た川名なんじゃないか……という想像です。ルベオンネナイ沢
(?? = 典拠未確認、類型あり)
ペンケチャロマップ川の北側を通る国道 39 号は、今は「武華トンネル」で南隣のルベシナイ川流域に出てから石北峠に向かっていますが、昔はもう少し奥までペンケチャロマップ川沿いを遡って、ルベオンネナイ沢が合流するあたりで南西に向きを変えた後、今よりも短いトンネルでルベシナイ川流域に出ていました。地形図を良く見てみると、大雪湖からイトムカ(北見市留辺蘂町)に向かう場合、石北峠経由よりもルベオンネナイ沢経由のほうが距離が短いことに気づきます。ただ最高地点の標高が石北峠よりも高く、また急勾配になるからか道路は通っていません。
「ルベオンネナイ沢」ですが、ru-pes-onne-nay で「道・それに沿って下る・年長の・川」ではないかと思われます。なぜ onne なのかは、南の「ルベシナイ川」との対比のためでしょうか。
老いたる川?
「アイヌの峠道」は「急勾配でもいいのでとにかく短距離」という特徴が見られます。この点を考慮すると「ルベシナイ川」を遡って北見市に向かうよりも短距離で済む「ルベオンネナイ沢」経由をより重宝したのではないかと思われます。そのため「老いたる」から転じて「大きな」を意味する onne をつけて呼んだのでは……と考えてみました。「アイヌの峠道」は直線距離では最短となることが多いので、仮に石北峠に 4 km 級のトンネルを通すとなった場合は、ルベオンネナイ沢経由のルートも一案として考えられそうですね。
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