2021年11月20日土曜日

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北海道のアイヌ語地名 (885) 「白満布・照日内・辺知蘭内・波良内」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

白満布(しろまっぷ?)

sir-oma-p???
断崖・そこにある・もの(川?)
(??? = アイヌ語に由来するかどうか要精査)
謎が謎を呼ぶ「三角点」シリーズが続きます。中川町を流れる安平志内川の東支流である「クチャコロ川」と、音威子府村を流れる物満内川の西支流である「ハツリュウの沢川」の間の分水嶺上に「白満布」という三等三角点があることに気が付きました。

正確な読みからして不明なので即断は禁物ですが、「白満布」は「シロマップ」と読めそうに思えます。siroma は「立派な」と解釈できるので siroma-p であれば「立派な・もの」と読めますが、「シロマップ」であれば sir-oma-p で「断崖・そこにある・もの(川?)」とも考えられそうでしょうか。

ここで気になるのが、「白満布」三角点の北に「ハツリュウの沢川」という名前の川が流れていることです。「ハツリュウ」という名前の川を他所で見かけた記憶が無く、どう解釈したものかと頭を悩ませていましたが、「白満布」が「白流布」と誤記あるいは誤読されて、ついには誤記・誤読されたままカタカナに戻ってしまった……と考えることもできるかもしれません。

「ハツ」は「ハク」の誤記・誤読ではないかという想像です。誤読に誤読を重ねたことになるので、到達難易度が高いのが難点ですが。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

照日内(?)

so-{pin-nay}???
滝・{細く深い谷川}
(??? = アイヌ語に由来するかどうか要精査)
これも謎が謎を深める「三角点」シリーズですが、ついに読み方の想像すらつかない地点が出てきました。アイヌ語由来かも、と思わせるのが「内」の字だけというのも相当痛い話ですが……。

物満内川の西支流に「ヌプオマナイ川」と「砂金ノ沢川」という川があるのですが、これらの川か、あるいはその支流に「照日内」と読めそうな川があったのではないかと考えてみたいです。

もし「照日内」を「しょうひない」と読んだのであれば、so-{pin-nay} で「滝・{細く深い谷川}」と考えられないかなぁ……と想像してみたりします。元は so-us-{pin-nay} で「滝のついた細い谷川」だったかもしれませんし、あるいは so-us-nay で「滝のついた川」だったのが、「シ」が「ヒ」に転訛した……という可能性もゼロではないかもしれません。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

辺知蘭内(ぺんちらんない?)

pet-e-tanne-nay??
川・頭・長い・川
(?? = 典拠あるが疑問点あり、類型未確認)
JR 宗谷線の「筬島駅」の西(あるいは西北西)に「天狗山」という山があるのですが、天狗山の頂上に「辺知蘭内」という名前の三等三角点があります。この名前は、天狗山の西を流れる「ペンチクンナイ川」に由来すると思われます。

この「ペンチクンナイ川」も地理院地図と国土数値情報で名前に異同のあり、国土数値情報では「ペンチリンナイ川」となっています。三角点の名前は「辺知蘭内」なので、それらしく読めば「ペンチランナイ」となりそうでしょうか。「ク」と「リ」と「ラ」、カタカナだとそれなりに似ているのが面倒なところです。

以前に「ペンチクンナイ川」(記事では「ペンチリンナイ川」)の意味を検討した際には、penke-kun-nay で「川上側の・影・川」あるいは penke-kunne-nay で「川上側の・黒い・川」あたりではないか……としたのですが、明治時代の地形図に「ペチクンナイ」と描かれているように見えるのが、やはり気になります。

もし、「ク」でも「リ」でも「ラ」でもなく「タ」だったらどうか……という思いつきですが、「ペチクンナイ」は「ペテタンナイ」と読めそうな気もします。これだと pet-e-tanne-nay で「川・頭・長い・川」と解釈できそうです。pet-e が「川・頭」で「水源」を意味するとすれば、実際の地形とも合致しそうな気がするんですよね。

川の名前が nay なのに pet-e は無かろう……と思われるかもしれません。これについては反論の余地は無いのですが……。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

波良内(はらうち?)

para-utka
広い・浅瀬
(典拠あり、類型あり)
音威子府の市街地は天塩川の北東側にありますが、その対岸に「茨内ばらうち」という地名があります。道内の地名では「内」を「ナイ」と読ませるのが一般的ですが、ここは珍しく「ウチ」と読ませる地名です。

音威子府の南には「咲来」の駅と集落がありますが、咲来駅のほぼ真西に「波良内」という二等三角点があります(標高 488.1 m の山の頂上)。三角点の東西にはいくつもの川の水源があり、北東の川は地理院地図でも川として描かれている(他は単なる谷という扱い)のですが、川の名前は残念ながら不明のままです。

「波良内」という三角点は山の上にありますが、平野部には「茨内」という四等三角点も存在します。ただ、両者がそれぞれ由来を異にすると考えるのもちょっと無理がありそうな気がしています。「茨内」は para-utka で「広い・浅瀬」だとされるので、「波良内」も同じ由来だと考えるのが自然でしょう。

「波良内」三角点の 1 km ほど北に比較的幅広の鞍部があり、これを para-ok-chis で「広い・うなじ・中くぼみ」と呼んだ……とかだったら面白いかと思ったのですが、古い記録に「パラウツカ」あるいは「パラウッカ」とあるそうなので、やはり para-utka と考えるしか無いのかな、と思わせます。

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