(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
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ポン沼
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
「クッチャロ湖」は「大沼」と「小沼」の二つの沼で形成されていますが、小沼の北に「ポン沼」という沼があります。「ポン沼」と「小沼」の間は河川(名称不明)で繋がっていて、「ポン沼」の水が「小沼」に注いでいるように見えます。この「ポン沼」は大正時代の陸軍図にも「沼ンポ」と描かれているので、pon-to で「小さな・沼」と考えるのが妥当に思われますが、明治時代の地形図には「ペカレペウ
更科さんの「アイヌ語地名解」にも次のように記されていました。
現在ポン沼と呼んでいるのはぺカンペウントーといわれた沼。ペカンペは菱のこと、ウン・卜はそれのある沼の意。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.189 より引用)
あー、やはり。地形図では「ペカンペウシトー」とも読めたのですが、「──ウントー」が正解だったのでしょうか。なお、引用順が前後しますが、次のようにも記されていました。ポン沼とは小沼の意味で、元来はクッチャロ湖のうちの小沼と呼ばれている沼の名であったらしい。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.189 より引用)
「ペカンペウシトー」が何故「ポン沼」に化けたのだろう……と思ったのですが、なるほど、そう考えることもできますね。水のほとりにあるものに入る沼?
ちょっとした言葉遊びのような話になるのですが、pekampe は pe-ka-n(< un)-pe で「水・の上・にある・もの」と解釈できるとのこと(アイヌ語沙流方言辞典 p.519)。ka は「岸」や「ほとり」とも解釈できるようなので、もしかしたら pe-ka-(u)n-pe-un-to で「水・ほとり・にある・もの・そこに入る・沼」と読めてしまうのかもしれません。この場合の pe-ka-(u)n-pe は「水・ほとり・にある・もの」ですが、これが「小沼」を指していると捉えることはできるでしょうか。「『大沼のほとりにある沼』に入る沼」と考えてみたのですが、流石にこんなマトリョーシカ地名は無理があるでしょうか……。
ポンケイ川
(??? = アイヌ語に由来するかどうか要精査)
手元の資料にはこれ以上の情報を見いだせず、さてどうしたものか……という状態です。「東西蝦夷山川地理取調図」には小沼のほとりに「ヘンケトウ」という地名?が描かれていて、そう言われてみれば penke-i で「川下側の・もの(川)」と読めなくも無いでしょうか。
ただ「ペンケ」が「ポンケ」に化けたというのは、あまり他所で聞いたことが無いので、あるいは pon-ke-i で「小さな・削る・もの(川)」と考えるべきかもしれませんね。
オビンナイ川
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
以前に北海道のアイヌ語地名 (135) 「クッチャロ湖・ポン仁達内・オビンナイ川」で取り上げた川で、8 年ぶり 2 度目の登場です(汗)。オビンナイ川は「クッチャロ湖」の「小沼」の南部に注ぐ川の名前です。「クッチャロ川」から見ると西側から合流している川、ということになります。
この川は、明治時代の地形図では「オピン子ウシユナイ」と描かれていました。pinne は「オスである」という意味なので、o-pinne-us-nay かと思ったのですが、pinne を -us で受けるというのは文法的にもおかしな感じがしますし、他に例も見当たらないようです。
もちろん pinne の後に「なにか」がついていて、それが略されてしまったと考えることも可能ですが、今回の場合は何が略されたのか、皆目検討がつきません。
となるとやはり o-pin-nay の元の形が o-pin-ne-us-nay だったと考えるのが自然でしょうか。pin は pir の音韻変化したもので「渦」と考えることができますが、本来は「傷」と解釈できます。o-pin-ne-us-nay であれば「河口・傷・のようになっている・そうである・川」となるでしょうか。
「傷のようになっている川」というのも今ひとつピンと来ませんが、湿原を切りつけたようになっている川と言ったところでしょうか。
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