(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
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キムン芦別川(きむんあしべつ──)
(典拠あり、類型あり)
三笠市から国道 452 号の「三芦トンネル」を抜けると芦別市に入ります(実に分かりやすいネーミングですね)。三芦トンネルを抜けると、すぐに次の「キムントンネル」があり、トンネルを抜けた先には「キムンダム」があります。「キムンダム」は「キムン芦別川」のダムですので、川の名前に由来して名付けられたと考えられます。この「キムン芦別川」は、明治時代の地形図では「キムンアシユペツ」と描かれていました。
「北海道地名誌」には次のように記されていました。
キムン芦別川 (きむんあしべつがわ) 芦別川の右支流。アイヌ語で山奥にある芦別川の意。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.230 より引用)
はい。{kim-un}-{as-pet} で「{山にある}・{芦別川}」と考えて良さそうですね。アイヌ語で「山」を意味する語彙としては nupuri もありますが、nupuri が実体としての「山」を意味するのに対し、kim は概念としての「山」(山のほう)を意味します。知里さんの「──小辞典」にも次のように記されていました。
従ってこの kim は聳えることができない。それが nupuri「山」との差である。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.48 より引用)
ということですね。なお kim-un の対義語は pis-un で、「浜のほうにある」という風に捉えることができます。惣芦別川(そうあしべつ──)
(典拠あり、類型あり)
キムン芦別川は国道 452 号の「キムン橋」の近くで芦別川と合流しています。芦別川を南に遡ると「芦別ダム」があり、芦別ダムの東側に「惣芦別川」が合流しています。惣芦別川は芦別川の東支流、ということになりますね。明治時代の地形図には「ソーアシュペツ」と描かれていました。また「北海道地名誌」には次のように記されていました。
惣芦別川 (そうあしべつがわ) 芦別川の奥の右支流で芦別ダムの芦別湖に出る川。滝のある芦別川の意。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.230 より引用)
はい。so-{as-pet} で「滝・{芦別川}」となりそうですね。「北海道地名誌」には「滝のある──」と記されていますが、so-as-pet は厳密には「滝・芦別川」でしかありません。本来は so と as の間に un とか us とか、あるいは kor とかがあるべきなのでしょうが、省略したところで意味は自明だ……ということで、あっさり省略されてしまった、ということなんでしょうね。
惣顔真布川(そうかおまっぷ──)
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)(?? = 典拠あるが疑問点あり、類型未確認)
キムン橋から更に芦別川沿いを下ると「深山橋」(みやま──)という橋で「惣顔真布川」を渡ります。これも「読めたら勝ち!」っぽい川名のような雰囲気がプンプンしますが……。「北海道地名誌」には次のように記されていました。
惣顔真布川 (そうかまっぷがわ) 芦別川の右支流。アイヌ語「ソ・カ・オマ・プ」で滝の上にある川の意か。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.230 より引用)
so-ka-oma-p で「滝・上・そこにある・もの(川)」と考えられそうでしょうか。また同じく更科さんの「アイヌ語地名解」には次のように記されていました。惣顔真布川(そうかまっぷがわ)
芦別川の左支流。アイヌ名ソ・カ・オマ・プの当字で、滝の上にある川の意。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.119 より引用)
おっ、「北海道地名誌」では「──の意か。」となっていましたが、「アイヌ語地名解」では「川の意。」と断言していますね。また川の読み方がどちらも「そうかまっぷ」になっていますが、現在は「そうかおまっぷ」と読むのが一般的のようです。「そうかおまっぷ」であれば so-ka-oma-p と考えるのが自然に思えますが、ところが面白いことに明治時代の地形図を見ると「ソーウカオマプ」と描かれていることに気づきます。これであれば so-uka-oma-p で「滝・重なる・そこにある・もの(川)」とも読めてしまうのですね。
「惣顔真布川」に滝が複数存在するようであれば、so-uka-oma-p と考えるほうが正解に近いのかもしれません。
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惣顔真布川(そうかまっぷがわ)
返信削除芦別川の左支流。アイヌ名ソ・カ・オマ・プの当字で、滝の上にある川の意
kaは、平面的な上ではなく、三次元的な上の意味です。
滝の上では、滝の上に川が乗っていることになり、意味がおかしなことになります。
惣顔真布川には、滝はありません。