(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
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セトセ川
(典拠あり、類型あり)(?? = 典拠なし、類型あり)
堀株川(ほりかっぷ──)の北支流で、近くを JR 函館本線が通っています(国道 5 号は、西隣のシマツケナイ川沿いを通っています)。「東西蝦夷山川地理取調図」には「セトシ」という川(地名かも)と「セトシレ(シ)リコマナイ」という(おそらく)川が描かれています。また「竹四郎廻浦日記」には「セトシナイ」と「セトシシン(リ)コヲマヘツ」という川が記録されています。改めて見てみると、「ナイ」と「ヘツ」の使い分けって結構適当なんですね……。
丁巳日誌「曽宇津計日誌」には次のように記されていました。
少し上りて
セ ト シ
セトシシリコヲマベツ
等二河とも左りの方より落来る也。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「丁巳東西蝦夷山川地理取調日誌 上」北海道出版企画センター p.130 より引用)
どうやら「セトシ」も「セトシシリコヲマベツ」も川と認識されていた、ということで間違い無さそうですね。「床の多いところ」説
永田地名解を覗いてみると、……なんか良くわからないことが書いてありました(汗)。Set ushi セッ ウシ 床多キ處 疱瘡流行ノ際アイヌ此處ニ難ヲ避ケ假小屋ヲ作リシ處ナリト云フ「セツ」ハ巣ノ義ナレドモアイヌノ寢臺ヲ亦「セツ」ト云フ大変良く理解できました。「良くわからない」とか口走ってしまってすいませんでした(汗)。set には「寝床」という意味もあるんですね。
「床の多いところ」説への批判
「西蝦夷日誌」にも「痘瘡」にまつわるエピソードが記されていました。セツシ(小川)、此所に破家三軒有。故を問に、去年濱に痘瘡の有し時、爰へ逃来り居しとかや。
(松浦武四郎・著、吉田常吉・編「新版 蝦夷日誌(下)」時事通信社 p.108 より引用)
「爰」は「ここ」と読みます。ほぼストーリーが一致していますが、これらの解釈について山田秀三さんは「北海道の地名」にて次のように評価していました。松浦氏が来た時もここはセツシだった。その前年の小屋で地名ができたとは思われない。永田氏はアイヌから,その疱瘡避難の話を地名に結びつけた説話を聞いて書いたのではあるまいか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.474 より引用)
明快な解釈であるように思えます。疱瘡云々は「今風のフィクション」だったと考えて良さそうですね。「鳥の巣の多いところ」説
疱瘡の流行以前からもともと「セツシ」という地名(川名)だったと考えるならば……地名にセッが出て来るのは鷹の巣をいっていたことが多いようである。このセトセもセトゥシ「set-ush-i (鷹の)巣が・多くある・もの(川)」だったのではないかと考えて来たのであった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.474 より引用)
そうなるのでしょうね。set-us-i で「鳥の巣・多くある・もの(川)」と考えるのが妥当……でしょうか。実は「広くなるところ」説だったり?
……少し納得の行かないところがあるので、もう少しだけ考えてみました。もしかしたら sep-us-i で「広くなる・そうである・もの(川)」だった可能性は考えられないでしょうか?
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
sep(広くなる)という川名でもっとも有名なのが新冠の「節婦川」でしょうか。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
レベル感は異なるかもしれませんが、中流部から上流部にかけて一気に流域が広がっていることがわかります。どことなく「セトセ川」と似てないでしょうか?糠平湖の北に「メトセップ川」という川がありますが、この「メトセップ」という名前は、元々は現在「幌加川」と呼ばれている川の名前だったと考えられます。この川も、中流部から上流部にかけて一気に流域が広くなっています。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
似たような感じで「途中で支流が一気に増える」川としては、黒松内町に「白炭川」という川がありました。ただこの川の場合、「流域が広くなる」というよりは「フォークのような川」という形容が適切であるようにも思われるので、少しニュアンスが異なるかもしれません。そう言えば
「セトシシリコヲマベツ」のことを完全に忘れていました。松浦武四郎の記録には出てくるのですが、後に作成された地図にはその名前を確認できないため、正確な位置などは残念ながら良くわかりません。「セトシ」は「セトシ川」のことで、「シリコヲマベツ」は surku-oma-pet で「トリカブト・そこにある・川」あたりだったのでは無いでしょうか。
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