2019年12月8日日曜日

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北海道のアイヌ語地名 (684) 「ウエンシテイの沢川・アリバナイの沢川・アジシナイノ沢川・ノビタイの沢川」

 

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

ウエンシテイの沢川

{wen-sir}(-us)-nay??
{水際の断崖絶壁}(・ついている)・川
wen-{si-tu}-i???
悪い・{山の走り根}・ところ

(?? = 典拠なし、類型あり)(??? = 典拠なし、類型未確認)
物満内川の最上流部の支流のひとつで、ハツリュウの沢川の南側を流れています(西支流です)。今回も例によって解釈に苦しんでいますが……。

「ウエン」はとりあえず wen で「悪い」と考えるとして、「シテイ」がさっぱり訳がわかりません。「テ」が「ナ」の誤記だとすると「ウエンシナイ」となりますが、これだと wen-us-nay で「悪い・ある・川」ということになり、図らずも「ウエウシュッピナイの沢川」の解釈に近づきます。

wen-us という表現は若干据わりが悪いというのも「ウエウシュッピナイの沢川」と同様で、あるいは wen-sir(水際の断崖絶壁)だったのかもしれません。さらに言えば {wen-sir}(-us)-nay で、実は -us が省略されていたのかもしれません。「{水際の断崖絶壁}(・ついている)・川」ということになりますね。

「テ」が誤記ではなく元の音に近いと仮定するならば、wen-{si-tu}-i で「悪い・{山の走り根}・ところ」とかでしょうか。si-tu は山から伸びる長い尾根と考えられますが、それらしい山があるかと言われるとあるような、そうでも無いような……。物満内川とウエンシテイの沢川の間の山がそうなのかな、と思ったりもしますが……。

アリバナイの沢川

ar-pa-nay???
もう一方の・崎・川

(??? = 典拠なし、類型未確認)
ウエンシテイの沢川が物満内川と合流する地点から、物満内川を 100 m ほど遡ったところで合流している東支流の名前です。

arpa で「行く」という語彙がありますが、どうやら見事に「沙流方言」のようで、他のエリアでは oman を使用するとのこと。

さてどうしたものか……と思ったのですが、改めて地形図を見てみると「ウエンシテイの沢川」と「アリバナイの沢川」の合流点が、まるで十字路のようになっていたことに気が付きました。川が十字路になっているということは、川を形成する峰も左右に並ぶということで、左側(東側)の崎(pa)を ar-pa(もう一方の・崎)と呼んだのかもしれないな、と思い始めています。

ということで、ar-pa-nay で「もう一方の・崎・川」かなぁと考えてみました。

アジシナイノ沢川

anchi-us-nay???
黒耀石・ある・川
an-us-nay???
鷲捕小屋・ある・川

(??? = 典拠なし、類型未確認)
本当にアイヌ語に由来するのか、なんか試されている感が半端じゃないのですが……。「アジシナイノ沢川」(あ、「──ノ沢川」だ)は物満内川最上流部の東支流です。

色々と検討してみましたが、さっぱりこれと言った解が浮かばず……。anchi という「黒耀石」を意味する語彙があるので、anchi-us-nay で「黒耀石・ある・川」とかかなぁ……と考えてみました。

あるいは、an で「鷲捕小屋」という語彙があるので、an-us-nay で「鷲捕小屋・ある・川」あたりの可能性もあるかなぁ、と考えました。これだと「アヌシナイ」になるので、「ヌ」が「ジ」に誤記されたということになってしまいますが……。

ノビタイの沢川

nup-kitay(-nay)???
野原・奥(・川)
和名?

(??? = 典拠なし、類型未確認)
物満内川最上流部の西支流の名前です。音からは nup-tay(-nay) のように考えられそうですが、これだと「野原・林(・川)」となり、実際の地形にあまり即していないようにも思えます。

nup-kitay(-nay) であれば「野原・奥(・川)」となり、一応は実際の地形にも即した感じになりそうですが、nup-kitay が「ノビタイ」に化けるというのが少々厳しい感じもします。

……よくよく考えてみれば、「ノビタキ」という野鳥がいるので、実はそれに由来する和名の可能性もあったかもしれません。

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