2019年11月17日日曜日

北海道のアイヌ語地名 (679) 「クチャコロ川・パナクチシ川・レイケ川・茶古志内川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。

クチャコロ川

kucha-kor(-nay?)?
常設の山小屋・持つ(・川)

(? = 典拠未確認、類型多数)
道道 118 号「美深中川線」はその名の通り美深町と中川町を結ぶ道道で、中川町側は概ね安平志内川沿いを通っています。美深町の恩根内駅近くからは「オグルマナイ川」沿いを西に向かい、小車峠を越えて大川沢川、そしてクチャコロ川沿いを通って安平志内川にかかる「拓計橋」を渡ることになります。

道道 118 号の「小車峠」ですが、路面決壊のため通年通行止めとのことですのでご注意ください。一度走ってみたい道の一つなんですけどね……。

この「クチャコロ川」、手元の資料には一切記載が見当たらなかったのですが、普通に kucha-kor(-nay?) と考えていいんじゃないかな、と思います。kucha-kor(-nay?) であれば「常設の山小屋・持つ(・川)」となりますね。

平取町に「苦茶古留志山」という山や「クチャコルシュナイ沢」という川がありますが、それとほぼ同じ形ではないかと考えています。

パナクチシ川

pana(-wa-an)-kucha(-kor-nay?)??
川下側(・に・ある)・常設の山小屋(・持つ・川)

(?? = 典拠なし、類型あり)
クチャコロ川の北支流の名前です。地理院地図では「パナクチャ川」となっていて、これならば pana(-wa-an)-kucha(-kor-nay?) で「川下側(・に・ある)・常設の山小屋(・持つ・川)」であり、また「川下側(・に・ある)・{クチャコロ川}」ということになります。

ただ、戦前の「陸軍図」には「パナクシ川」と記されていました。これを pana(-wa-an)-kus(-nay?) で「川下側(・に・ある)・通行する(・川)」と読むこともできそうな気もするんですよね。もっともその場合、kucha-kor(-nay?)kus(-nay?) がたまたま並んでいたことになるわけで、それもちょっと変な感じもするわけですが……。

レイケ川

rer-ke(-oma-nay?)
山かげ・のところ(・そこに入る・川)

(?? = 典拠なし、類型あり)
大岡昇平の「レイテ戦記」を思い起こさせる川名ですが、もちろん何の関係もありません(お約束)。

レイケ川は道道 118 号の「拓計橋」の 南 300 m ほどのところで安平志内川に合流する西支流の名前です。こちらも全く手元の資料に記載が見当たらないのですが、rer-ke(-oma-nay?) で「山かげ・のところ(・そこに入る・川)」あたりの可能性は考えられないでしょうか。

茶古志内川(ちゃこしない──?)

chi-kus-nay?
我ら・通行する・川

(? = 典拠なし、類型多数、正確な読みは未確認)
安平志内川上流部の西支流の名前です。上流部に「茶古志山」という名前の山も存在しています。

「東西蝦夷山川地理取調図」には「ルリシアヘシナイ」という川が描かれています。「ルリシアヘシナイ」が「茶古志内川」のことであるかどうかは不明で、どちらかと言えば「三股川」のことを指していた可能性のほうが高いようにも思えます。

「ルリシアヘシナイ」は「ルクシアヘシナイ」の誤りである可能性があるかと考えています。ru-kus-{a-pes-nay} は「道・通行する・{安平志内川}」と考えられ、川筋にアイヌの交通路があったことを示唆しています。

「ルクシ」と「茶古志」が似ているかと言われると、決してそのようには思えませんが、「茶古志」が chi-kus である可能性はあるかもしれないな、と思えてきました。chi-kus-nay であれば「我ら・通行する・川」ということになります。

問題は果たして「茶古志内川」が交通路として適切かどうかなのですが、水源までたどっても遠別町、または幌加内町の町境に辿り着けないという大きな問題があります。ただ「茶古志山」の南の鞍部を越えてワッカウエンベツ川側に出て、そこから改めて遠別側に出るために山越えする、というルートも考えられるのかもしれません(ちょっと強引な感じもしますが)。

あるいは、より「交通路」として適切だと考えられる現在の「三股川」を、もとは「茶古志内川」と呼んでいたのかもしれません。この場合、「茶古志山」の場所を取り違えた可能性も考慮すべきでしょうか(ただ、戦前の「陸軍図」でも、現在の位置に「茶古志山」が描かれていました)。

前の記事続きを読む

www.bojan.net
Copyright © 1995- Bojan International


0 件のコメント:

コメントを投稿