(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地図をクリックしたら地理院地図に飛べたりします。
登位加川(といか──)
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)(?? = 典拠あるが疑問点あり、類型未確認)
登位加川は、常呂川の西支流である「仁頃川」に注ぐ北支流の名前です。仁頃川が常呂川と合流するあたりでは、常呂川は北北西に向かって流れているので、登位加川は常呂川と真逆を向いて流れていることになりますね。山田秀三さんの「オホーツク海沿岸の小さな町の記録──常呂町のアイヌ語地名調査」には、次のように記されていました。
トイカ
ポンクマ川上流から、隣りの端野町にかけての旧地名。語義不詳。トイカなら「地面」、トイ・カ「畠の・上」、あるいはト・イカ「沼・溢れる(あるいは越える)」などなどに聞えるがまったく見当がつかない。
(山田秀三「アイヌ語地名の輪郭」草風館 p.104 より引用)
確かに……全く見当がつきませんね。念のため昔の地形図を眺めてみたところ、「登以加」という字が当てられていたこともあるようです。山田さんの試案はどれも可能性がありそうですが、その中では to-ika で「沼・越える」とするのが一番「地名らしい」かなぁ、という気がします。ただ畑作に適した肥沃な土がある……なんて話もあったりして、toy-kar で「畑を・つくる」なんて表現もあるので、toy-kar-us-pe で「畑を・つくる・いつもする・もの(ところ)」なんて可能性も捨てきれません。
要するに、やっぱりなんとも言えないということです(おい)。
金尾内川(かねおない──)
(典拠あり、類型あり)
北見市仁頃町の国道 333 号沿いを流れる東支流の名前です。この川は戊午日誌「西部登古呂誌」や「東西蝦夷山川地理取調図」にも「カニヲナイ」と記載されています。「カニ」は「蟹」ではなく kani で「金」(きん)のことかと思われます(日本語からの移入語彙かなぁと)。kani-o-nay であれば「金・多くある・川」ということになりますね。想像するに、砂金の採れる川だったんじゃないかと思われますが、いかがでしょう?
2020/9/27 追記
「角川日本地名大辞典」によると、明治時代に砂金の試掘が行われたものの、残念ながら砂金は発見されなかったとのこと。
ルクシニコロ川
(典拠あり、類型あり)
北見市仁頃町の国道 333 号沿いを流れる西支流の名前です。金尾内川とは違い、本流(仁頃川)と遜色ない……と言うとちょっと言い過ぎですが、仁頃川の支流の中では規模の大きいほうです。戊午日誌「西部登古呂誌」には「ルウクシニコロ」とあり、また「東西蝦夷山川地理取調図」には「ルークシニコロ」とあります。みんな大好き「ルークシ系」の川名のようですね。ru-kus-{ni-kor} で「道・通行する・{仁頃川}」と考えて良さそうです。
ru-kus- はアイヌの峠道を意味すると捉えることが可能ですが、ルクシニコロ川にほぼ沿う形で国道 333 号が整備されているのは面白いですね。アイヌの峠道は勾配を度外視した上で最短距離で結んでいることが多いので、鉄道や自動車道としては使いづらいものも少なくなかったのですが、昔と比べて長いトンネルを掘りやすくなった現在では、距離の短縮効果が大きいこともあり、再評価されるケースが出てきているような気がします。気がするだけですが(汗)。
クトンニコロ川
(典拠あり、類型あり)
ルクシニコロ川の南支流の名前です。NHK 北海道編の「北海道地名誌」に記載があったので、さっそく見てみましょう。クトンニコロ沢 ルクシニコロ川の右支流。アイヌ語で岩棚ある仁頃川の意。この川に入ると岩があって山が越せないので。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.431 より引用)
ふーむ。kut-un-{ni-kor} で「帯状に岩のあらわれている崖・ある・{仁頃川}」ですか。このあたりでは崖を kut と言い表すことが多いようですね。www.bojan.net
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