(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
イオカマップ川
(?? = 典拠なし、類型あり)
国道 274 号の「千呂露橋」から見て北東に位置する支流の名前です。残念ながら国土地理院の地形図には川としては記載されていませんが、北から南に向かってほぼ一直線に切れ込んだ谷があります。ここを流れる支流の名前が「イオカマップ川」のようです(OpenStreetMap による)。明治期の地形図には、この川の場所に「シヨタイ」と記されています。so-tay であれば「滝・林」となりそうですね。
現在の「イオカマップ川」という名前もなかなかユニークなもので、意味を正確に解することが難しいのですが、e-oka-oma-p で「頭(水源)・多くある・そこに入る・もの(川)」とかでしょうか。
「頭が多い」と言えば「ヤマタノオロチ」みたいですが、イオカマップ川は長さの割には支流が多く、「水源」と呼べそうな場所が少なく見積もっても 12 箇所くらいありそうなので、その特徴を名前にしたものではないかと考えてみたのですが、いかがでしょうか。
セタウシュクセタシナイ川
(?? = 典拠あるが疑問点あり、類型未確認)
日高町千栄の東に、沙流川の南支流で「カラ沢川」という川があるのですが、カラ沢川の合流点から 600 m ほど遡ったところで北から南に注いでいる支流の名前です。地形図にも川として記されていますが、残念ながら名前は記されていません。「東西蝦夷山川地理取調図」には「セタニウシノホリ」という山の存在が記されていて、また沙流川の北支流として「セタニウシナイ」という川が記されています。
戊午日誌「東部沙留誌」には次のように記されていました。
またしばし過て
セタウシノホリ
左りの方小川。是恐らくは鹿梨多き岳の有る処なり。鹿梨夷言セタニウシといへり。此川の傍に一ツの岳有、其の名なり。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下」北海道出版企画センター p.74 より引用)
「セタウシ」のところに(セタニウシ)と注が付されていて、また頭注には「セタンニ えぞのこりんご さんなし」と記されています。なるほど、これは setanni で「エゾノコリンゴの木」のことと考えて良さそうですね(遠軽町の「瀬戸瀬」も「エゾノコリンゴ(の木)」に関連する地名ではないか、という説がありました)。さて、「セタウシュクセタシナイ川」も「セタニ」に関連するだろうというところまでは何となく見えてきましたが、随分と先が長そうに見えます。これはえーと…… setar-us-kus-{ta-us}-nay で「エゾノコリンゴ・多くある・通行する・{刈る・いつもする}・沢」あたりではないかと想像してみました。
まず「エゾノコリンゴの木」は setanni ですが、「エゾノコリンゴ」の果実そのものは setar と言うのだそうです。「セタウシュ」であれば setan(ni)-us と解釈することも可能ですが、より素直に setar-us と捉えたほうがいいんじゃないか、と考えてみました。
あとは「クセタシナイ」ですが、これを kus-{ta-us}-nay(あるいは kus-{ta-us-nay} かも)ではないかと考えてみました。kus は「通る」「通行する」と言った意味ですが、ru-kus-{nup-sam}(信砂)や mata-ru-kus-{kene-puchi}(剣淵)あるいは ru-kus-{charo}(茶路)と言った例があります。つまり、「セタウシュクセタシナイ川」沿いを遡った先に ta-us あるいは ta-us-nay という川があるだろう……という想像です。
分水嶺の向こう側には、双珠別川の支流の「ポンソウシュベツ川」あるいは「五の沢川」があります。このどちらか、希望的観測では「五の沢川」がかつて ta-us-nay(あるいは tat-us-nay とか)と言った名前だったんじゃないかなぁと思っているのですが、いかんせん証明する術がありません……。
ユクフシュツベ沢川
(?? = 典拠なし、類型あり)
国道 274 号の「岩瀬橋」と「清瀬橋」の間のあたりで沙流川に合流する西支流の名前です(このあたりでは沙流川は北から南に流れています)。想像だけで解釈してしまいますが、これは単純に yuk-us-pet で「鹿・多くいる・川」だったんじゃないでしょうか。「ツベ」は「ベツ」の誤記じゃないかという、「豪快に想像してみました」系の解釈です(汗)。
ユクルベユツベ沢川
(?? = 典拠なし、類型あり)
国道 274 号の「清瀬橋」のすぐ南側で沙流川に合流する西支流の名前です。この支流を遡って分水嶺を越えると双珠別湖の上流側に出ることができます。そう言えば沙流川と双珠別川を結ぶ地下水路がありますが、これってどっちの水をどっちに融通しているんでしょう……?「ユクルベユツベ沢川」について、今回も想像だけで解釈してしまいますが、yuk-ru-pes-pe で「鹿・道・沿って下る・もの」だったんじゃないでしょうか。「ユツ」が「シュ」の誤記じゃないかという、これまた「豪快に想像してみました」系の解釈です(汗)。
まぁ、どちらも「豪快に想像してみました」系なのは間違いないのですが、そんなに間違ってないんじゃないかなぁと思っていたりします。
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