(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
ウヨロ川
(?? = 典拠あるが疑問点あり、類型未確認)
萩野と白老の間を流れる川の名前です。ややこしいことに、白老町には「アヨロ川」もありますが、アヨロ川とウヨロ川は全く別の川です。「東蝦夷日誌」には次のように記されていました。
ウヨロ(川有、夷家三軒)此川陸は爰にて越れども、川口は白老・フウベツと是三ツ一ツに合て海に入るなり。
(松浦武四郎・著、吉田常吉・編「新版 蝦夷日誌(上)」時事通信社 p.99 より引用)
地形図を見ると、西からウヨロ川・ブウベツ川・白老川が同じような間隔で海に向かって流れているのに、海の直前で三川とも迷走を始めて、最終的には合流して海に注いでいます。興部のような o-u-kot する川と言えそうですね。o-u-kot は、知里さんの語原解では「陰部が・おたがい・くっついている」とのこと。「地形人体説」に則って考えると「陰部」は「尻」、即ち「河口」という意味になりますね。
なんだか良くわからない川名ですが、永田地名解には簡潔に解が記されていました。
Oyoro オヨロ 凹ミふむ……。意味がよくわからないのでちょっと凹んでしまいます。
ということで、山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょうか。
ウヨロ川
他に例を見ないし,何のことだか分からない。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.384 より引用)
んほ──! うーん、これは困りましたね。野作東部日記(安政年間)は「宇余呂(ウヨロ)。ウヨロは岩より出る水を云。此小川の上に大なる岩有て此岩より水流れいづるなり」と書いた。土地のアイヌから聞いた話であろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.384 より引用)
これはこれは……ますます意味がわかりません。困りましたね。……と書いているうちに気がついたんですが、これ、もしかして o-u-oro だったりしませんかね?(o-u-kot からの連想) o-u-oro であれば「川尻・互いに・その中」と読めそうな感じがします。あるいは o-u-or-o で「川尻・互いに・その中・にある」あたりで、後ろの -pet が略されたんじゃないかなぁ、と。
イレスナイ川
(?? = 典拠なし、類型あり)
道央道・萩野 PA の北側でウヨロ川の東支流の名前です。萩野 PA から北北西に 1 km ほどのところに独立峰があり、それが「タツコフ」(tap-kop)として記録されているからか、山の北側から流れ出ているイレスナイ川に関する記録は(手元で調べた限りでは)見当たりません。「イレスナイ」という音からは、i-ru-us-nay で「アレ・道・ある・沢」かな? と思えたりします。「アレ」というのは言挙げを憚るための言い回しで、「マムシ」だったり「クマ」だったり様々ですが(もしかしたら「エゾオオカミ」なんて可能性もあったりしますかね)、「足跡」なので今回はクマかなぁ、と思ったりします。{i-ru}-rus-nay で「{クマの足跡}・ある・沢」かなぁ、と。
あと、i-resu で「もの・育てる」という意味があるそうです。i-resu-nay で「もの・育てる・川」つまり「養殖河川」という考え方も(理屈の上では)可能かもしれません。ただ、アイヌの世界で魚の「養殖」というのはあまり耳にしないので、流石に違うんじゃないかなーと思っていますが……。
イサカナイ川
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
ウヨロ川の中流部で並流している西支流の名前です。イサカナイ川とウヨロ川の間に「ポンイサカナイ川」も流れています。「東西蝦夷山川地理取調図」や「東蝦夷日誌」には「イシヤカナイ」と記されています。石で焼くのも風情があっていいと思うんですけどね……(何の話だ)。
「イサカナイ」という音からは、e-sak-nay で「頭・持たない・川」という解釈が真っ先に連想されます。この場合の「頭」は「水源」ですから、「水源を持たない川」というのも本格ミステリの風格たっぷりなネーミングに思えてきます。
「題名のない音楽会」以上に謎めいている「水源を持たない川」ですが、地形図を眺めてみると、確かに妙なことに気づきました。イサカナイ川の水源はここのように思えるのですね。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)
地形図のこの記載を信用するならば、水源のところが崖になっているように見えるのです。なるほど、この特徴を評して「水源を持たない川」としたのかな……と思ったわけです。もう一つの可能性として、i-satke-nay で「もの・乾かす・川」というのも考えてみました。鮭の干物でも作ったのかな……と思ったりもするのですが、さすがにこれ以上は傍証の取りようも無く。あえて言うなら、日当たりは良さそうな地形に思えますけどね。
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