2017年9月10日日曜日

北海道のアイヌ語地名 (468) 「尾刺・チリチリ川・出石川」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

尾刺(おさし)

o-sat(-nay)?
河口・乾いている(・川)
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
知内川の北側、北海道新幹線の「第二湯の里トンネル」を出たあたりの地名です。同名の川もあります。

 尾剌川(おさしがわ) イデス川の対岸で知内川に合する左小川。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.92 より引用)
……手元にはこれ以上の情報が無いのですが、地形図で見た感じでも下流部に扇状地があるようですので、これは素直に o-sat(-nay) で「河口・乾いている(・川)」と考えていいのではないか……と思います。

チリチリ川

chir(i)-chir(i)(-nay)??
鳥・鳥(・川)
(?? = 典拠なし、類型あり)
知内川の北側を流れる支流で、尾剌川の西隣を流れています。「東西蝦夷山川地理取調図」には「ハキチヤリ」の東を流れる川に「ツヽラ川」と記されていて、現在の「ツラツラ川」と「チリチリ川」が混同されているようにも見えるのですが、「竹四郎廻浦日記」には次のように記されていました。

     ハギチヤリ
川巾三十余間。また追々岸崩れて広くなるよし也。小石川。馬は歩行わたり、人は船にて渡す。渇水の時は人も歩行にて渡るによろし。是本川すじ也。越て人家二軒。山稼並に渡し守兼る。
     ツヽラ川
川有、巾七八間。歩行わたり。此処より右え入ると温泉場え行よし。
松浦武四郎・著 高倉新一郎・解読「竹四郎廻浦日記 上」北海道出版企画センター p.187 より引用)
これを見た限りでは、「ツヽラ川」は現在の「ツラツラ川」のことを指していると考えて良さそうです。「ツラツラ川」も気になる名前ですが、詳しくはまた日を改めて。

本題の「チリチリ川」ですが、うーん、やっぱ chir(i)-chir(i)(-nay) で「鳥・鳥(・川)」あたりなんじゃないでしょうか。日に日に「?」の数が増えていきそうな感じですが……(汗)。

出石川(いです──)

i-tes(-nay)??
それが・すべる(・川)?
(?? = 典拠あるが疑問点あり、類型未確認)
海峡線の旧・知内駅(現在の「湯の里知内信号場」)の西側を流れる支流の名前です。蕎麦で有名な出石(いずし)ではなく「いです」と読むみたいですね。

「竹四郎廻浦日記」には次のように記されていました。

並て
     カヤフリノ 平地
     イテヌ川  巾四間斗
     イ テ 川  巾三間斗
     ハギチヤリ
川巾三十余間。
(松浦武四郎・著 高倉新一郎・解読「竹四郎廻浦日記 上」北海道出版企画センター p.187 より引用)
「イテヌ川」とありますが、「ヌ」の字に(ス)とルビが振られていましたので、誤記の可能性が高いということなのでしょうね。「イテス川」と「イテ川」があって紛らわしいのですが、「イテス川」が「出石川」ではないかと考えてみたいです。

i-tes(-nay) だと考えると、「それが・すべる(・川)」と言った感じでしょうか……? 類型を知らないのであまり自信は持てないのですが、「蛇がすべる川」と読めなくも無いかもしれません。仮にこの理解が正しいとして、本当に蛇がすべり出る川だったのか、あるいは川の流れ自体が蛇のような形をしていたのかは判断がつかないわけですが……。

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