2017年9月3日日曜日

北海道のアイヌ語地名 (466) 「知内・森越・重内」

やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。
(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

知内(しりうち)

chir(i)-ochi
鳥・多く居るところ
(典拠あり、類型あり)
木古内町の南に位置し、青函トンネルの入口のある町です。現在は北海道新幹線に「湯の里知内信号場」がありますが、その前身である海峡線時代は「知内駅」という名前の旅客駅でした。知内駅は信号場になってしまいましたが、近くに道の駅が健在です。

また、木古内から松前までは「国鉄松前線」が走っていて、こちらには「渡島知内駅」が存在していました。ということで、まずは「北海道駅名の起源」から。

  渡島知内(おしましりうち)
所在地 (渡島国) 上磯郡知内町
開 駅 昭和 12 年 10 月 12 日
起 源 アイヌ語の「チリ・オチ」(鳥が群れをなして住む所)から転かしたもので、むかしこの付近にタカの名所があったといわれている。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.20 より引用)
はい。どうやら chir(i)-ochi で「鳥・多く居るところ」と考えて良さそうですね。永田地名解にも同様の解が記されていました。

Chiri ochi  チリ オチ  鳥居ル處 知内(川、村)ノ原名此川ノ近傍鷹ノ名所ナルヲ以て此名アリ和人「チリ」ヲ「シリ」ト訛ル例多シ休明光記ニ鷹取ノコトヲ記載セリ
永田方正北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.152 より引用)
どうやら「──駅名の起源」の解は永田地名解をベースにしたものだったようですね。

本題から外れますが、松前線の駅が何故「渡島知内」と旧国名を冠したものだったのかについては、「──駅名の起源」に次のように記されていました。

東北本線にも同音の駅があるので、国名の「渡島」をつけた。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.20 より引用)
最初「ん?」と思ったのですが、これは東北本線の「尻内駅」のことだったようです。そんな駅あったっけ? と思ったのですが、これは現在の「八戸駅」のことでした。これは盲点でしたね。

森越(もりこし)

mo-ru-kus-i
小さな・路・通っている・ところ
(典拠あり、類型あり)
知内町北部の地名です。海峡線に「第一森越トンネル」「第二森越トンネル」「第三森越トンネル」があるのでご存じの方も多い地名かもしれません。

トンネルは割と山手にありますが、森越は森越川の河口部にある集落の名前です。国鉄松前線にも同名の駅がありました。ということで、まずは「北海道駅名n(ry

  森 越(もりこし)
所在地 (渡島国) 上磯郡知内町
開 駅 昭和 12 年 10 月 12 日 (客)
起 源 アイヌ語の「モ・ルクシ」(子である道)から転かしたものではないかと思われる。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.20 より引用)
あっ、なるほど! これはちょっと想定外でした。字の感じから言っても和名かなーと思っていたのですが、mo-ru-kus-i で「小さな・路・通っている・ところ」と読み解けます。

一応セカンドオピニオンも見ておきましょうか。

地名は, アイヌ語のモルケシ(子供の道・えだ道の意) が転訛したものと考えられる(知内町史概説)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1535 より引用)
概ね同じ解のようですね。「モルケシ」という音からは mo-ru-kes で「小さな・路・端」とも読めなくは無いかもしれませんが、ちょっとピンと来ないので参考程度に。

重内(おもない)

o-mu-nay
河口・塞がる・川
(典拠あり、類型あり)
松前に向かう国道 228 号は、木古内から知内まではほぼ真っすぐ南下して、知内で西に向きを変えて知内川の南側を内陸に向かって進みます。海沿いは矢越岬を始めとする断崖絶壁が続くため、山越えの道が古くから街道として使われていたようです。

木古内と江差を結んでいた国鉄松前線もほぼ同じルートを辿っていましたが、国道 228 号が知内川の南側を通っていたのに対して、国鉄松前線は知内川の北側を通っていました。重内は知内から見て西に位置する集落の名前で、国鉄松前線に「重内駅」という駅がありました。

ということで、まずh(ry

  重 内(おもない)
所在地 (渡島国) 上磯郡知内町
開 駅 昭和 37 年 12 月 25 日 (客)
起 源 この地の字(あざ)名「重内」からとったもの。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.20-21 より引用)
おーい。そんなことは百も承知なんですよぅ。

仕方がないので、更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」を見てみます。

 重内(おもない)
 知内川の支流、重内川についた名。アイヌ語オム・ナイとは川口のつまる川の意である。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.7 より引用)
ふむ。明快な解が出てきました。確かに知内のあたりは砂浜が続いていて、河口が沿岸流によって流された砂で埋まりそうな地形をしています。o-mu-nay で「河口・塞がる・川」と考えて良さそうな感じですね。

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