2013年1月6日日曜日

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北海道のアイヌ語地名 (104) 「縫別・二股・タクタクベオベツ川」

 

「白糠町のアイヌ語地名」も無事?第三回を迎えました。さぁ、今日も張り切って参りましょう!

縫別(ぬいべつ)

ni-un-pet?
木・そこにある・川
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
南北に長い白糠町の、ちょうど真ん中のあたりの地名です。かつては国鉄白糠線の駅がありました。現在は道東自動車道の工事が進んでいます。

では、今回は更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」から。

 白糠線の駅名。もともと近くを流れる茶路川の支流の名であるが、アイヌ語の意味は明らかでない。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.244 より引用)
あららら。割と簡単な地名だと思ったのですが、これはまた意外です。永田地名解にもそれっぽい記載は見当たりません(探し方が足りないのかも知れませんが)。「角川──」にも、項目そのものはあるものの、「地名の由来は」で始まるお馴染みの一節がありません。

というわけで、久々に「北海道駅名の起源」の出番となりました。

アイヌ語の「ニウンペッ」(木のある川)から出たもので、これが「縫別」に転かしたのである。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.151 より引用)※「ン」は小書きの「ン」
へぇぇ。こんな解りやすい由来なのであれば、記録に残っていても良さそうなものなんですけどね。もっとも、少々厄介な話もありまして、たとえばゼンリンの地図をベースに制作されている Yahoo! の地図を見ると、このあたりはカタカナで「ノイベツ」と記されています。ni-un-pet と「ノイベツ」の間には多少の隔たりがあるので、あるいは別の由来 *も* あるんじゃないかな、などと思ったりもします(白糠と同じような感じで)。

とりあえず、今日のところは ni-un-pet で「木・そこにある・川」としておきましょう。

二股(ふたまた)

pet-e-u-ko-hopi-i?
川が・そこで・互・に・捨て去る・所
(? = 典拠未確認、類型多数)
国鉄白糠線の「北進駅」があったあたりの地名です。もともとは「釧路二股」という駅名になる可能性があったのですが、「足寄まで」という願いを込めて「北進」という瑞祥駅名に変わってしまったのでした。但し、もちろん集落の名前としては「二股」が現在も使われています。

このあたりで「茶路川」と「タクタクベオベツ川」が合流しているのですが、アイヌ的なものの考え方では「ここで川が二手に分かれている」となります。そのため、このあたりは「二股」という地名だったようです。

「二股」はもちろん日本語ですが、もともとは「ペテウコピ」という地名だったと考えられます。知里さんの「──小辞典」によれば、pet-e-u-ko-hopi-i で「川が・そこで・互・に・捨て去る・所」となるのだとか。あちこちで目にする「ペテウコピ」も、こんなに細かく分解できるものだったのですね。

タクタクベオベツ川

taktak-pi-o-pet?
玉石・石・多くある・川
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
さて、そのペテウコピの左側を流れる川の名前です。川に沿って国道 274 号・392 号が走っています。どことなく「ぷろだくしょんバオバブ」を彷彿とさせますが、多分何の関係も無いと思います。

頼みの「北海道の地名」も「角川──」も全滅ということで、唯一残ったのが永田地名解でした。こちらです。

タクタクベオ ペッ 大石多キ川 安政帳ニ大川ノ内大石アル處トアル是レナリ斜里郡ニ同名ノ地アリ
永田方正北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.324 より引用)
「安政帳」とあったので、念のため松浦武四郎「蝦夷日誌」にも目を通してみたのですが、該当する「大石アル處」は見つけられませんでした。それどころか、「左本川」とまで書いてあります。現在は「右」が本川なんですが、松浦武四郎が歩いた頃は、この「タクタクベオベツ川」が本川とされていたかも知れないのですね。

自分で選んでおきながら「これは意味はわからないだろうなー」と思っていたのですが、どうやら taktak-pi-o-pet で「玉石・石・多くある・川」ではないかな、と思えてきました。

tak-tak という単語を目にすることがあまり無かったのですが、実は知里さんの「──小辞典」にも載っているような単語で、「玉石」あるいは「ごろた石」という意味なのだそうです。

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