2012年12月22日土曜日

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北海道のアイヌ語地名 (99) 「昆布森・宿徳内・地嵐別」

 

みんな大好き「釧路町のアイヌ語地名」ですが、ようやくゴールが見えてきました!

昆布森(こんぶもり)

kompu-moy
昆布・入江
(典拠あり、類型あり)
来止臥から少し西に行ったところにある、チョロベツ川の河口部に広がる集落の名前です。このあたりでは割と大きな集落で、小中学校や交番、消防などもあるようですね。

では、山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょう。

上原熊次郎地名考は「コンブムイ。夷語コンブモイなり。則昆布の入輪といふ事。此所狭き入輪なれど多く昆布のある故地名になすといふ」と書いた。コンブ・モイ(kombu-moi 昆布の・入江)の意。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.262 より引用)
根室には「昆布盛」という地名がありますが、全くの同地名だった可能性がありそうですね。「角川──」も「昆布の・入江」説を追認する一方で、更科源蔵さんは別解の可能性を残していました。

 釧路町沿岸の部落、もと昆布森村役場の所在地。アイヌ語コンプ・モイで昆布湾の意か、コンポ・モイで瘤山の入江の意か。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.267 より引用)
「コンポ」というアイヌ語は初耳なのですが、もしかしたら「タㇷ゚コㇷ゚」のことなのでしょうか。あるいは「瘤」という日本語からの借用語彙なのか……。いずれにせよ、異説の域を出ることは無さそうな感じです。

ということで、釧路町昆布森の語源は kompu-moy で「昆布・入江」で良さそうに思えます。

宿徳内(しゅくとくない)

sikutut-us-nay
エゾネギ・多くある・沢
(典拠あり、類型あり)
昆布森の西、城山集落の西隣に位置する集落の名前です。今回も「北海道の地名」を見てみましょう。

永田地名解は「シュクトゥッ・ウㇱ・ナイ(野葱沢)」と書いた。えぞねぎ・群生する・川の意(shukutut は shikutut ともいう)。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.262 より引用)
はい。sikutut-us-nay で「エゾネギ・多くある・沢」と見て良さそうです。「エゾネギ」は各種アイヌ語辞書では sik-utur とされていますが、山田秀三さんによれば「shikutut あるいは shikutur といわれた」ということのようです(「北海道の地名」p.400 より)。

地嵐別(ちあらしべつ)

charse-pet
チャラチャラと滑り落ちる・川
(典拠あり、類型あり)
宿徳内の西隣にある地名です。70 m ほどの標高差をわずか 500 m ほどでまっすぐ海に向かって落ちていく急流があるところですが……。こちらも「北海道の地名」を見てみましょうか。

 小地名であるが,当てた字が面白い。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.262 より引用)
確かに(笑)。続きを見てみましょう。

松浦図ではチヤラセヘツ。チャラセ・ペッ「charse-pet (水が)ちゃらちゃら音たてる(滑り落ちる)・川」の意。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.262 より引用)
釧路町分遣瀬(ワカチャラセ)と似たような感じの地名ですね。charse-pet で「チャラチャラと滑り落ちる・川」ということになります。道内には「チャラセナイ」という地名が多いのですが……

チャラセナイの名は諸地に多いが,ここは小さな川なのにペッで呼ばれていた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.262 より引用)
あ、かぶりましたね。そう、charse の場合は -nay のほうが多い印象があるのですが、ここは -pet なのが面白いです。道東は「ペッ」が多い地域とは言え、直前に sikutut-us-nay もあるので、謎ですね……。

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