分遣瀬(わかちゃらせ)
(典拠あり、類型あり)
アイヌ語の charse は、「(水が)チャラチャラと滑り落ちる」様を意味する単語で、一種のオノマトペと考えられます。そして wakka は「水」という意味ですから、wakka-charse で「水・チャラチャラと滑り落ちる」という意味になりますね。実にわかりやすい地名です。さて、折角なので、山田秀三さんの「北海道の地名」も見ておきましょう。
老者舞のすぐ西の処の名で,これは分かりやすい。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.260 より引用)
うは(笑)。そうですよねぇ。確かに「わかりやすい」です。永田地名解は「ペチャラセ(滝)」と書き,明治 30 年 5 万分図はワㇰカチャラセとした。東蝦夷日誌のヘチヤラセ・エト(小岬)もこれのついた名。ペ(pe)もワㇰカ(wakka)も「水」で,どっちでもいったのであろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.260-261 より引用)
なるほどー。アイヌ語「地名」がいかに現実的に名付けられているかが良くわかる一例ですね。別の言い方をすれば「意味さえ合うならどっちゃでもええ」と。素敵ですね(笑)。賤夫向(せきねっぷ)
(?? = 典拠あるが疑問点あり、類型未確認)
分遣瀬のすぐ西隣にある地名です。生憎「北海道の地名」では触れられていないので、今回は更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」から。釧路町海岸。どうしてこう読まなければならないかと思うほどの当て字である。あまりむつかしいので、最近セキネップと仮名で表記している。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.268 より引用)
あはははは(笑)。ということで続きです。松浦地図にはセフヌンケとあるが、永田方正氏は「チェプヌルンゲㇷ゚。石墜ル処。直訳魚下ル処。小石ノ崩レ墜ルコト魚ノ川ヲ下ルガ如シ故ニ名ク」とある。ほかに例もなく疑問多い地名である。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.268 より引用)
えーっと、永田説は chep-un-rutke-p で「魚・そこにいる・崩れる・所」ということでしょうか。確かにほかに例のない、疑問の多い地名ですね。入境学(にこまない)
(?? = 典拠あるが疑問点あり、類型未確認)
入境学は、賤夫向から少し西の、穏やかな南斜面のあたりの地名です。これもさっぱり見当がつかないので、更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」から。釧路町海岸。ニオッケオマナイで、ニオッケは木の桶のことで、昔桶が流れついたところで名付けたという。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.268 より引用)
更科節が炸裂ですね。地名説話としては面白いのですが、後人の創作っぽい印象も拭いきれません。「ニオッケオマナイ」という音からは、ni-otke-oma-nay という語源が考えられます。訳すと「木・刺さる・そこにある・小川」といった感じでしょうか。小川の中に木が取り残されてしまった……という景色を想像しているのですが、いかがでしょうか。
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