伊茶仁(いちゃに)
(典拠あり、類型あり)
なんとなく「おーいお茶」のような雰囲気も漂いますが……(←)。「伊茶仁」は標津川のひとつ北の川筋にある地名です。空知に「一已」(いちやん)という地名がありますが由来はほぼ同じで、ichan-i で「産卵場・所」といった意味となります(文法的には「産卵する・所」かも知れませんが)。この「産卵場」はサケ・マスの産卵場です。カリカリウス遺跡
(典拠あり、類型あり)
伊茶仁には「カリカリウス遺跡」という名の、竪穴式住居の跡が残っています。http://www.shibetsutown.jp/pogawa/iseki.html によると、2,549 もの住居跡が見つかっているとのことで、縄文時代にはこのあたりは大都会だった……ということになりますね。さて、その「カリカリウス」の意味なんですが、永田方正翁は karakara-ushi で「鷲鳴ノ處(川名)」と記しています。萱野さんの辞書によると、鷲や鷹は kapa-cir というそうなので、永田翁の解釈はちょっとそのままでは受け入れがたい感じがします。
より地理的な側面に照らし合わせて見てみると、カリカリウス遺跡の東南側を流れるポー川が、とてもくねくねと「回流」していることに気がつきます。kar(i) は「回る」という意味なので、kari-kari-us で「回る・回る・多くある」と考えられそうです。kari-kari-us-pet(カリカリウス川)と pon-kari-kari-usi-pet(小カリカリウス川)があって、「ポンカリカリウス」が略されて「ポー川」になった……のかも知れません。
標津(しべつ)
(典拠あり、類型あり)
si-pet で「大きい・川」という意味です。……ちょっとあっさりと行き過ぎましたか(汗)。「シベツ」という音の地名は「標津」以外にも「士別」もあって紛らわしいので、標津町の駅には「根室標津」という名前がつけられました。もっとも路線名は「標津線」だったわけですが。
山田秀三さんの「北海道の地名」には、次のような記述もあります。
標津については上原熊次郎は「シベツとは大川といふ事。此川近辺の大川なる故此名ある由」と書き,松浦武四郎知床日誌は「シベツ。シペヲツの訛り。鮭有る義なり」と書いたが,どれも当時のアイヌからの聞き書きらしい。松浦氏の書いたシペオツ(shipe-ot 鮭・多くいる)説はこの辺が鮭場所であったことから出た解であろうが,道内の処々にあったシベツの名と合わせて考えれば,古く上原説の書いたシペッ(shi-pet 大・川)が元来の語義だったのではなかろうか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.232 より引用)
ふむふむ。松浦武四郎の sipe-ot 説はなかなか面白いですが、どちらかと言えば後付けの説……なのかもしれませんね。茶志骨(ちゃしこつ)
(典拠あり、類型あり)
chasi-kot で「砦・跡」という意味です(またか)。……とりあえず、山田さんの「北海道の地名」でも見てみましょうか。
標津市街の南にある地名,川名。茶志骨はチャㇱ・コッ(chash-kot 砦・跡)の意。丘陵が海の方に向かって突き出している処がある。その辺にチャシがあったのだろうか。それでその辺一帯の土地が茶志骨の名で呼ばれたのであろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.234 より引用)
ふーむ。そういえば……確かにこんな地形だったような気がします。
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