2012年8月11日土曜日

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北海道のアイヌ語地名 (65) 「面白内・恵岱別・美葉牛」

 

本日も、今ひとつ面白味にかけるネタ、妙に手間がかかったネタ、めちゃくちゃあっさりしたネタなどを取りそろえて見ました。

面白内(おもしろない)

o-mosir-o-nay
川尻に・島・ある・川
(典拠あり、類型あり)
現地調査(←)の結果は、残念ながらそれほど面白いものでは無かったのですが……。山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょうか。

 雨竜側の西支流で雨竜町内を流れている川。オモシロナイ(o-moshir-o-nai 川尻に・島が・ある・川)の意。今は島らしい姿が見えないが,昔はこの川尻の辺の面白内か,あるいは雨竜川かに島があったのであろう。川の場合は,川の中に取り残されて木などの生えている処をモシリ(moshir 島)と読んだ。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.77 より引用)
はい。地名解的にもそれほど面白いものではなく(←)、o-mosir-o-nay で「川尻に・島・ある・川」で間違いなさそうです。

恵岱別(えたいべつ)

e-etaye-pet?
頭(水源)・引っ張る・川
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
面白内川からさらに北に向かい、道の駅や雨竜サーキットの先にある川の名前、です。今回は「角川──」(略──)を見てみましょう。

江戸期の松浦武四郎の「廻浦日記」に「イタイベツの川端に出申候……此処小石急流にして,岸の少し深き処は桃花魚多く上候に付,一人は火をもし,外の者共は是釣に纔時に三十余尾を得,直に是にて昼飯等を認め,急流の事故十人共に手を引き漸々渡り得申候……此川の右岸を弐丁も上り,其より谷地様の処え出候。此処秦皮・赤秦皮・谷地秦の木・桂のみなり」と見える。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.214 より引用)
うーん、苦労して引用した(特に「纔」の字。「わずか」という意味らしいですが)割には地名解的にはびみょうですね……。というわけで「北海道の地名」も見てみましょうか。

語義がはっきりしない。永田地名解もただ?印を付けただけである。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.77 より引用)
出ました! 永田地名解の伝家の宝刀「?」がっ!

etaye はふつう「引っ張る,引き抜く」であるが,知里博士の上川郡地名解の中では「頭がずっと奥へ行っている」と訳されている。その意味でこの長い川をエタイェ・ペッと読んだのでもあろうか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.77 より引用)
確かに地図を見てみても、「恵岱別川」の水源は、他の川と比較してももっとも暑寒別岳の頂に近いところにあります。となると e-tanne-pet で「頭・長い・川」が正解かな? と思えてきますね。

美葉牛(びばうし)

pipa-us-i
カラス貝・ある・所
(典拠あり、類型多数)
同音の、美瑛町の「美馬牛」のほうが有名かもしれませんね。また、平取町にはカタカナの「ビバウシ」という地名があります。pipa-usi で「カラス貝・ある所」という意味ですね。

「カラス貝」と言うのは貝殻が黒っぽい貝のことですが、ヨーロッパで食材として使われる「ムール貝」とは別のものです。「カラスガイ」については、生憎 Wikipedia でもエントリが未作成のようで残念です。

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