野田生(のだおい)
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
地名としては、駅の名前にもなっている「野田生」がメジャーですが、近くを流れる川の名前は「野田追」だったりしてややこしかったりします。えー、とりあえず「角川──」(略しすぎ)から見て行きましょう。古くは「のたへ」「のたあい」ともいった。渡島(おしま)地方北部,内浦湾の野田追川流域。地名の由来に関しては,アイヌ語のヌㇷ゚タイ(野林の意)による説(北海道蝦夷語地名解),ヌタイ(焼野の意)による説(蝦夷地名考并里程記),ノタオイ(煩(ママ)のいくつかある所の意),あるいはノッオイ(あごのような岬のいくつかある所の意)による説(ゆうらふ17)など諸説がある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1134 より引用)
ふむふむ、なるほど。ちなみに「煩のいくつかある所」は「頬のいくつかある所」の誤植だと思われます。煩わしいものがいくつもあったら、ちょっとね(笑)。さてさて、このままではさっぱり判らないままなので、山田秀三さんにセカンドオピニオンを頂きましょう。
八雲町内の地名,川名。川の東は野田追,西は野田生と書く。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.418 より引用)
へぇー(・∀・)永田地名解は「ヌㇷ゚・タイ(野・林)。今ノタオイと云ふは非なり」と書いた。野田追の音と少し離れた解に見えるが,永田方正は明治 15 年(1882 年)ごろ八雲にいて,アイヌと接触の深かった人なので,まずはこの説に従いたい。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.418 より引用)
ということで、nup-tay で「野・林」説をプッシュされているようです。……そうです。記憶のいい方ならお気づきかも知れませんが、nup-tay と言えば「二風谷」(にぶたに)の語源である可能性もあるんですよね(異説も多いですが)。隠された兄弟地名を探すのも楽しいものです。落部(おとしべ)
(典拠あり、類型あり)
現時点では道央道の終点なので、ここの知名度も上昇中でしょうか。はい、では「角川──」を見てみましょう。古くは「おとしつへ」「おとさつへ」「オトスベ」どもいい,乙志部・落辺とも書いた。渡島(おしま)地方西部,内浦湾沿岸の落部川流域。地名の由来は,ヲテシベ(梁のある所の意)による説(蝦夷地名考并里程記),オテシュペッ(川尻に魚筍(やな)を掛ける所の意)による説(北海道蝦夷語地名解)などがある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.309 より引用)
「魚筍(やな)を掛ける」とありますが、「筍」は「たけのこ」で、「やな」だと「?」のようなのですが……気にせず行きましょうか。ただ、こうやって連続して誤植かも知れないものを見つけると、「角川──」のこのあたりの記述は今ひとつ信頼性に欠けるんじゃないか、などと不安になってしまいますね。とりあえず、どうやら tes は「梁」(やな)と考えて良さそうですね。o-tes-pet で「川尻に・梁・川」か、あるいは知里さん風に o-tes-un-pet で「川尻に・梁・のある・川」と考えて良さそうです。
茂無部(もなしべ)
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
函館本線の「石倉」駅の近くを流れる川が「茂無部川」です。「茂るものは無い」といった雰囲気が醸し出されますが、さてその由来は……?永田地名解は「ムナウㇱペ。草の生長する処」と書いたが,ムナに草の意があったのだろうか。ムヌㇱペ「mun-ush-pe 草(雑草)・群生する・者(川)」のような意だったのではなかろうか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.421 より引用)
現実は然に非ず、草ぼーぼーだったみたいです(←)。mun-us-pe で「草・群生する・所」か、あるいは mun-us-i-pet で「草・群生する・所・川」あたりかなぁ、と思います(山田さんは後者の説を記していませんが、もしかしたら何か理由があるのかも知れませんね)。森(もり)
(典拠あり、類型あり)
「ウォッちず」で「渡島森」の図葉を見ると、国道 5 号線沿いに道の駅があり、そこには「オニウシ公園」と書かれています。……いいヒントですね。このあたりで内浦湾に注ぐ「鳥崎川」は、別名を「オニウㇱペッ」と言うのだそうです。o-ni-usi-pet で「川尻に・木が・群生している・川」となるのですが、ni-usi が和訳されて「森」になった、ということのようです。:)o-ni-usi-pet と言えば、そのものズバリ「鬼志別」という地名が、北海道の北端にほど近い猿払村にあります。「鬼志別」と「森」も兄弟地名かも知れませんね。
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