濃昼(ごきびる)
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
黒光りするアレは、もともとは「ごきかぶり」と呼ばれ、「御器を齧る」ことからそう名付けられた、などと聞きました。「御器」と言えば、名古屋の「御器所」(ごきそ)が頭に浮かびますが、このまま脱線してもアレなので、さっさと先へ行こみゃあ。で、この「ごきびる」なんですが、角川日本地名大辞典によると、
地名の由来には,アイヌ語のボキンビリ(山の陰の意)による説(蝦夷地名幷里程記),ポキンピリ(山の陰の意)による説(北海道蝦夷語地名解),ボキビル(滝壺に水が落ちて沸騰するの意)による説(浜益村史)などがある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.541 より引用)
とあります。「ボキンビリ」or「ポキンピリ」は、おそらく pokin-pir で「下の・渦」または「下の・陰」あるいは「下の・傷」という意味になります(pir は色々な取り方ができるようです)。「ボキビル」は……意味が良くわかりません。チャック・ウィルソンさんあたりに聞いた方が良いかもしれません(←ただ、全くの別解として ho-kipir で「尻(河口)に・水際からそそり立っている崖」とすることもできるようです(以前にコメントでご指摘いただいたものです)。実際の地形もこの解にマッチしているように思えるので、ho-kipir 説が有力かも知れません。
厚田(あつた)
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
ここも意外と意味がはっきりしないようなのですが、at-ta-us-i の -us-i が下略され at-ta になったのではないか、と考えられているようです。「なんだはっきりしてるじゃないか」という話なのですが、解釈がすっきりしないのですね。普通に考えると at は「おひょうの皮」(「おひょう」は楡の一種)なので、「おひょうの皮・剥ぐ・いつもする・所」となるのですが、-at であれば「──の群れ」という意味になります。これがもし heroki-at-ta-us-i であれば、「ニシン・群れ・捕る・いつもする・所」となってしまいます。何しろ、ニシン漁で有名だったマシケ場所のすぐ近くなので、あえて heroki(ニシン)という単語を言挙げしなくても at で普通に通じた、ということも十分に考えられます。
しかしながら、古い記録によると、このあたりに at-woro-us-nay(「おひょうの皮・水に浸す・いつもする・川」)という地名もあるようなので、ここはやはり at は素直に「おひょうの皮」とすべきなのかも知れません。
んー、頭がこんがらがってきました。
望来(もうらい)
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
スペースが足り無かったので地図には記載がありません(すいません)。ということで Yahoo! さんの地図を代わりにつけておきましょう。さて、その意味ですが……
地名の由来には,アイヌ語のモライ(遅く流れる川の意)による説(北海道蝦夷語地名解),モウライ(風向により川口が閉じたり開いたりするところの意)による説(西蝦夷日誌)がある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1511 より引用)
「あれ、モライって何だっけ?」と疑問を持ってしまうところでしたが、永田方正は「北海道蝦夷語地名解」にて、ご丁寧に「『モイレ』ト同義」と補足を入れてくれていました。もしかしたら moyre の音韻が転倒して moray になった……なんてオチかも知れません。あるいは moyre-nay(モイレ・ナイ)が訛って「モライ」になったのかも。moyre の意味は「静かである」、moyre-nay であれば「流れの遅い・川」といったところのようです。
一方、「風向により──」という解として「モウライ」説がありますが、山田秀三さんの推測では mu-nay(「塞がる・川」)あたりではないかとのこと。さーて、どっちが正解でしょうかっ!?
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