阿弖流為は「えみし」?「えぞ」?
昨日は、唐突に「蝦夷のリーダー」だった「阿弖流為」(アテルイ)の話をしました。阿弖流為が主戦場としたのが岩手県の胆沢のあたりですから、当時、岩手県は蝦夷の勢力下にあった、ということになります。ちなみに、広辞苑による阿弖流為の説明は次のようなものです。
「蝦夷の族長」とありますね。
蝦夷(えみし、えびす、えぞ)は、日本列島の東方、北方に住み、畿内の大和朝廷によって異族視されていた人々に対する呼称である。時代によりその範囲が変化している。近世の蝦夷(えぞ)はアイヌ人を指す。
(Wikipedia 日本語版「蝦夷」より引用)
これは昨日も引用した文ですが、最後に一文増えています(昨日は意図的に引用しませんでした)。確かに、近世における「蝦夷地」の住人は、大半が「アイヌ」であることは間違い無いのですが、それが「阿弖流為」らの「蝦夷」と類似の存在なのか、あるいはまったく別物なのか、意見が分かれているのだとか。私自身は「蝦夷」=「アイヌ」だとばかり思っていたのですが、これは必ずしも確実とは言えないのだそうで。「えみし」の定義
まず「えみし」の定義から。えみし
古代の蝦夷(えみし)は、本州東部とそれ以北に居住し、政治的・文化的に、大和朝廷やその支配下に入った地域への帰属や同化を拒否していた集団を指した。統一した政治勢力をなさず、積極的に朝廷に接近する集団もあれば、敵対した集団もあったと考えられている。しかし、次第に国力を増大させていく大和朝廷により、征服・吸収されていった。蝦夷と呼ばれた集団の一部は中世の蝦夷(えぞ)、すなわちアイヌにつながり、一部は和人につながったと考えられている。
(Wikipedia 日本語版「蝦夷」より引用)
ちょっと引用が長くてすいません。「えみし」と「えぞ」の違いを明らかにしておかないと面倒なことになりそうなので、長めに引用してみました。……つまり、この定義に即して考えると、「阿弖流為」は「えみし」だった、ということになる……と思います(弱気)。いや、「えみし」と「えぞ」の違いなんて、今まで考えたこと無かったもので。でも、
ただし、蝦夷(えみし)と蝦夷(えぞ)は、別ものである。蝦夷(えみし)と蝦夷(えぞ)は同じ漢字を用いていることから混同されやすいが、歴史に登場する時代もまったく異なり、両者は厳密に区別されなければならない。
(Wikipedia 日本語版「蝦夷」より引用)
なのだそうです。「安倍氏」「清原氏」そして「奥州藤原氏」
その後、平安時代になると、遠征にかかる費用が馬鹿にならなくなり「事業仕分け」の対象にされたか、それとも単なる「平和ボケ」からか、「蝦夷討伐」は行われなくなります。平安時代前期(9世紀)になると、畿内朝廷は蝦夷に対する直接の征服活動を諦め、畿内朝廷の支配領域の拡大は現在の岩手県と秋田県のそれぞれ中部付近を北限として停止する。その後は、現地の朝廷官僚や大和化した俘囚の長たちが蝦夷の部族紛争に関与することなどにより、徐々に大和化が進行していったものと思われる。前九年の役、後三年の役などが勃発し、平安後期の東北北部は戦乱の時代であったが、当事者のうち安倍氏や清原氏は俘囚の長を自称し蝦夷との系譜的関連性を主張しているが、他方源氏などは蝦夷とは全く無関係のまま東北に乗り込んでおり、当時の民族状況の一端が伺える。
(Wikipedia 日本語版「蝦夷」より引用)
「安倍氏」や「清原氏」の名前は良く目にするのですが、自称「蝦夷」系なのですね。可能性はあると思っていましたが……。そして、「安倍氏」「清原氏」以上に東北において栄華を極めたのが……平安末期になると、蝦夷との血縁的・系譜的関係を主張する奥州藤原氏の支配が東北北端まで及ぶことになる。
(Wikipedia 日本語版「蝦夷」より引用)
あの金ピカ中尊寺でおなじみの(←)「奥州藤原氏」ですが、「蝦夷との血縁的・系譜的関係」と言うからには、自他共に「蝦夷(えみし)の子孫」を任じていたと考えられます。「えみし」はどこに消えた?
その「奥州藤原氏」も、大量破壊兵器……じゃなくて戦争犯罪人(源義経)をかくまったとしてイチャモンをつけられ、やがて滅ぼされることとなります。奥州藤原氏が源頼朝率いる関東地方の鎌倉政権によって滅ぼされると、幕府は東北地方各地に東国武士を派遣し、ここに蝦夷と全く無関係な鎌倉幕府(関東政権)による支配がはじめて東北北端にまで及ぶことになる。相前後して蝦夷、俘囚などと言った民族的諸概念は文献から姿を消し、次項に述べる「エゾ」に置き換わる。
(Wikipedia 日本語版「蝦夷」より引用)
奥州藤原氏の滅亡と時を同じくして、「えみし」の存在が文献史料から姿を消し、代わって「えぞ」の存在が確認できるようになります。……へぇ、そーだったんだ?(←
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