2009年12月4日金曜日

サンフランシスコ 2009/夏 #79 「出会いは一期一会」

サンフランシスコ市中心部に戻ったのは 20 時近く。そろそろ車を Hertz のモータープールに返却して、晩飯にありつきたいところです。こちらでも日本と同様にガソリンは満タン返しが基本のようなので、近くのガソリンスタンドで燃料を入れることにしました。

ガソリンスタンドはセルフ給油です。クレジットカードをカードリーダーに通して、暗証番号を入れて通れば給油ができるのですが、何度か試してもうまくいきません。どうやらカードの向きや方向を間違えている模様。無理にカードの挿抜を繰り返して、カードを破損させてもシャレにならないので、メインカードとは別のカードを取り出して、あれやこれやと試していました。

その前から気になっていたのですが、どうやら隣の給油口のところに腰掛けている男性がひとり。どうやらホームレスっぽいようなのですが、彼は私が四苦八苦しているのをめざとく見つけ、何も言わないのにこちらにやってきて「わかったわかった。手伝ってやるよ」と言い始めました。

「クレジットカードはあるか?」
「そう、その向きに入れて、引き戻せ」
「ああ、俺はあんたのカードには手は触れないよ。泥棒だと思われるのは心外だから」
「よし。暗証番号を入れて」

動揺する Bojan。つい暗証番号を間違えてしまう。

「カードを見せてみな」
VISA カードのついたセゾンカード(←)を見せる。
「あんたの国では使えるのだろうが、ここ(アメリカ)ではダメなのかも知れないな」
「よし。俺が(ガソリンスタンドの)係員と話をしてやる。ついて来てくれ」

歩きながら。

「ところで話があるんだ」
来た……!
「俺はホームレスなんだ。食べ物を買うのに金がいる」
「俺はあんたを手伝ってやるから、かわりに 6~7 ドル恵んでくれないか?」
ああ、わかったよ。
「ありがとう。恩に着るぜ。じゃ、中に入ろう」

ガソリンスタンドのオフィスにて。
「こいつ(私のこと)はガソリンを入れたがっているんだが、カードが認識できないようなんだ」
ガソリンスタンドの係員は、私に向かって「クレジットカードを見せて」と。カードを通して認証はクリアできたのか、「で、何ドル分入れる?」と。

私が「満タンにしたいのだけど、何ドル分入るかはわからない」などと返答していると、係員氏が「じゃあ 30 ドルくらいか?」と目分量を提示。ホームレス氏も「いや、俺は 25 ドルくらいだと思う」などと負けずに会話に噛んできます。どうやら、事前にある程度の額で伝票を切って、後で差額を返金するという話のようです。

手続きが終わってオフィスを出ると、ホームレス氏が「ところで、さっき約束したお金のことだが……」と。約束は約束なので、7 ドル手渡しました。ホームレス氏はガソリンスタンドの従業員になったかと思しき身のこなしで、給油ノズルを給油口にセットして、満タンになるまで給油をしてくれます。給油が終わった後は、「よし、じゃあもう一回俺についてきてくれ」と、再度オフィスまで行って返金処理を促してくれました。

給油作業が一通り終わると、「実は俺、ホントに金が無くて、日々の暮らしにも困ってるんだ。助けると思ってもう 1 ドル恵んでくれないか?」と。まぁ、良くありそうな話ですが、彼は「お駄賃」を稼ぐためとは言え随分と良くしてくれたわけで、さらに言えば明日にも帰国しようかとする日本人にとっての $1 と、彼にとっての $1 の重みが違うことも明らかだったので、つい「わかった」と口にしてしまったわけでして……。

ただ、今回は条件をつけました。「1 ドルあげるかわりに、あなたの写真を撮らせてください」と。きっと、彼とは二度と会うことは無いはず。でも、この出会いは大切にしたい……なんて。:p

「ところであんたはどこから来たんだ?」
日本から。明日帰るんだ。
「日本だって! 俺の写真はそんな遠いところに行くのか!? そいつは凄いな! たまげたぜ! 俺の写真が日本でだと? すげーや……」
その時に撮影したのが……この写真です。彼は「乞食」であることには違いありませんが、詐欺行為を働くわけではなく、とても性根はいい人でした。3rd St にある Shell の GS で見かけた方は、ぜひ近況をお聞かせ下さい。

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