「なんでもアイヌ語起源説」を斬る(のか?
そうそう。昨日の記事の「to-char-seta-ru」ですが、「とーチャル」は実際に「沼の入り口」という意味です。同様に「セたル」も「犬の通う道」という意味ですので、あながちウソとは言えない……というか、大ウソなんですけどね。もう随分と昔になりますが、「万葉集は古代朝鮮語で読み解ける!」とか、そんなネタ本がウケていた時代がありました。真偽の程はさておき、疑似科学にすらなり得ないような、荒唐無稽な「創作」である、と断じる人もいます。
同様のことが「なんでもアイヌ語起源説」にもあるようで……。特にアイヌ語は、公用語として使用する人々がもう居ないということもあり、テケトーなコトをぬかして……あ、いやいや、お上品に参りましょう。いい加減なことを仰ってらっしゃる例も少なからずあるようでございまして……(← 誰やねん)。
ま、そーいった風潮に対する、一種のアウスレーゼだとお考え下さい。あ、アンチテーゼだったかも(←
「カムイワッカ」の光と闇
そんなこんなで(どんなだ)、「カムイワッカの滝」にやってきました。リンク先の Wikipedia のページをご覧になった方は、「あれれぇ~」と江戸川コ○ンばりの反応を示された方も……いないと思いますけど……、「カムイワッカの滝」が指し示すものは、微妙にブレがあるようですね。海から見てきたのは、当然ながら、海に注ぎ込む滝のほうです。上流部の温泉のことではありません。
あ……。「カムイワッカ」は kamuy-wakka のこと、「カむィワッカ」という風に、「む」にアクセントがつくようです。いつもの通り、知里真志保「地名アイヌ語小辞典」を参考にしているのですが、解説文があまりに秀逸なので……。ちょーっと「正当な引用」の枠を超えているような気もしますが、大胆に引用してみます!
kamuy-wakka カむィワクカ もと,’神の水’或は’魔の水’の義。多くのばあい──ことに北海道南西部において──飲用に適する清らかな湧水をさす。とくに湿原とか山中とか良好な飲用水の容易に得られぬような場所にぽかっとすばらしくいい水が湧いているばあい,そう名づけたようである。しかし,北の方へ行くとかならずしもそうではない。辺要分界図考によれば千島のチリポイ島に唯一カ所だけ水の湧く泉があり,それを kamuy-wakka といって,岩砂の間から僅かに一碗ぐらいずつ湧きでる水が,色も香も全く辛い酒のようだが酌んでひさしくおけば甘くなったとある。北見国斜里郡知床半島の硫黄山の麓の海岸にもカムイワッカがあり,これは見たところ清冽そのものであるが有毒成分を含み,それを飲用水として連用した鉱夫が多数中毒死したという記録がある。つまり普通の場合と反対に飲用にならぬ危険な水を kamuy-wakka といった例もあるのである。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」より引用)
同じ「カムイワッカ」という言葉でも、「神の水」であったり「魔の水」であったりするわけですね。文中に言う「北見国斜里郡知床半島の硫黄山の麓の海岸」が、まさしくこの「カムイワッカの滝」のことを指します。「有毒成分」は、硫黄分のことでしょうね。硫黄採掘の今昔
「鉱夫が」とあるのは、硫黄山で採掘される硫黄鉱山での労働に従事した人々のことですね。硫黄はカヤック……じゃなくて火薬の原料となるために重宝されましたが、現在は、原油から石油を精製するプロセスで発生する硫化水素から硫黄を回収する方法が一般的で、また、それだけで需要を満たすことから、もはや硫黄を採掘する必要は無いそうです。今日は「カムイワッカの滝」だけになっちゃいましたが、地図をつけておきます。
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